研究課題/領域番号 |
18K05201
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神内 直人 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00626012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境触媒 / 金属酸化物担持貴金属触媒 / 再分散 / 再活性化 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
担持金属触媒の表面電子状態やナノ構造は触媒の性能に強く影響するため、これらを正確に理解することが重要である。本年度は、酸化スズ (SnO2) 粒子を担体とするロジウム (Rh) ナノ粒子触媒の表面電子状態変化の分析、高分解能透過電子顕微鏡 (TEM) によるナノ構造の観察に重点を置いて研究を行なった。 Rh/SnO2触媒に対して様々な前処理を行うことでCO酸化活性が変化することを初年度に明らかにした。そこで、これらの活性変化の要因を解明するため、大気中焼成、水素還元処理、再酸化処理を施したRh/SnO2触媒の表面電子状態をX線光電子分光法 (XPS) により調べた。大気中で焼成したRh/SnO2触媒では、Rhの電子状態は酸化状態であった。この触媒に対して200度での水素還元処理を行なった結果、酸化状態に加えて、金属状態のRhが存在していることが確認された。さらに高温の400度で水素還元処理を行なった触媒では、Rhに由来するピークが極めて弱くなり、Rhは金属状態または還元状態であることが示唆された。一方、400度の水素還元処理後に400度で再酸化処理を行うと、酸化状態のRhが検出され、焼成後と類似した電子状態をしていることが分かった。これらの電子状態の変化は、400度での水素還元処理による活性劣化、再酸化処理による再活性化に対応していると考えられる。以上のように、様々な条件での前処理により引き起こされる触媒活性の変化には、Rh/SnO2触媒の活性成分であるRhの電子状態が強く相関していることが分かった。また、TEM観察および元素分析から、水素還元処理後にcore-shell構造の粒子が存在し、coreはRhとSnから成り、shellはSn成分を多く含有することが明らかになった。この特徴的な構造が、Rh触媒の再活性化に重要な役割を果たすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年6月の大阪北部地震により環境制御型透過電子顕微鏡 (ETEM) が故障したため、初年度は触媒のガス中その場観察を行うことができなかった。現時点ではその初年度の遅れを完全には取り返すことができていない。最終年度である令和2年度は研究をさらに加速させ、研究計画通りにETEM観察により再分散過程を明らかにし、金属ナノ粒子触媒の再利用を実現するための指針を得ることを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ETEMによるその場観察に注力する。TEMの加速電圧や電子線照射量、TEM内に導入するガスの種類や圧力など、その場観察を行う条件の最適化を行なった上で、還元処理によるRhナノ粒子の粒子成長や、再酸化処理により誘発されるRh成分の再分散過程などの構造変化をその場観察する。また、Rh/SnO2以外の触媒についても触媒活性、表面電子状態、ナノ構造の相関について検討する。得られた研究成果を学会などで積極的に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に触媒討論会での研究成果発表を予定していたが、新型コロナウイルス (COVID-19) の感染拡大防止のために中止になった。したがって、触媒討論会への参加費用を最終年度に繰り越すことになった。
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