研究課題
本研究では高難度反応のひとつであるベンゼンの直接官能基化が可能となる新しい金触媒の開発を目的としている。金をクラスター化することで、金と担体との接合界面が増えることから、ナノ粒子触媒では見られなかった触媒特性の発現をねらう。担持金クラスター触媒調製の手法として、前年度に引き続き、マイクロ波照射を用いる検討を行った。マイクロ波吸収効率の高い酸化マンガンにも適用可能な手法とするため、乾燥とともに還元処理までマイクロ波照射により行うことを試みた。マイクロ波照射後の金の状態(価数)をX線吸収分光法により調べたところ、Au(0)に還元された割合は、マイクロ照射時の最高到達温度に応じて、高くなった。250℃のとき、約50%がAu(0)だったことから、完全に還元するにはさらなる条件検討が必要であることがわかった。ベンゼンの直接官能基化の足掛かりとして、トルエンのアンモ酸化を行った。種々の金触媒を検討したが、酸化能の高い金属酸化物を担体とすると、目的のベンゾニトリルやベンズアミドがわずかながら、生成することがわかった。また、香料となる脂肪族エチルエステル合成のモデル反応として、反応性の低い長鎖脂肪族アルデヒドであるオクタナールとエタノールとのエステル化を検討した。これまで種々の金属酸化物に担持した金触媒を検討し、酸化亜鉛担持金触媒が最も効果的であることを見出していた。今年度は、担体の適用範囲を拡げるため、ハイドロキシアパタイトや置換アパタイトを担体とした金触媒を用いた。いずれも目的のオクタン酸エチルが主生成物として得られたが、置換イオンにより、担体の酸点の量が異なり、選択性が異なった。触媒の熱処理時の雰囲気を検討し、水素雰囲気よりも酸素雰囲気で処理した方が小さな粒径となり、触媒活性が高いことがわかった。
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Applied Catalysis A: General
巻: 603 ページ: 117747~117747
10.1016/j.apcata.2020.117747