研究課題/領域番号 |
18K05204
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
遠藤 智司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30748934)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラファイト / 吸着 / バイオチャー / 活性炭 / イオン性有機化合物 / 環境汚染物質 / 陰イオン性界面活性剤 |
研究実績の概要 |
研究初年度(2018)はまずグラファイトを固定相とした逆液体クロマトグラフィー法の確立を目標として研究を行った。また2年度目以降に実施予定だった炭素質吸着剤の系統的比較についても研究を開始した。 (グラファイトを用いた逆液体クロマトグラフィー法) 本法はグラファイトへの吸着係数を迅速に測定できるようにし、データの効率な収集を可能とするために確立を目指す。グラファイトへの吸着係数は今後より複雑な炭素質吸着剤の吸着性を解析する際の基礎データとなる。実験ではまず平均粒径15μmのグラファイト粉末をミニカラムに充填し、純水、15mM NaCl水溶液を流してコンディショニングした。死時間(dead time)の測定にはチオ尿素と硝酸ナトリウムをトレーサーとして用い、どちらを用いても同様な結果が得られた。イオン性有機化合物のモデル物質として4-エチルベンゼンスルホン酸を用い、28°C、15 mM NaClの条件でグラファイト/水分配係数の測定を試行した。測定では1つの明瞭なピークが得られ、保持時間の測定が可能であった。これはグラファイトカラムの作成が良好であることを示している。 (炭素質吸着剤の系統的比較) 様々な原料から製造された計9種類のバイオチャー及び2種類の活性炭を使用し実験を行った。陰イオン性の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)をモデル物質とし、各炭素質吸着剤への吸着係数をバッチ吸着実験により測定した。またバイオチャー及び活性炭の比表面積や炭素量も測定し、吸着係数と比較した。吸着係数は最大と最小で1000倍程度の違いがあった。おがくずを原料としたバイオチャーで活性炭に匹敵するほどの高い吸着係数が得られた。吸着係数とバイオチャーの比表面積の間には正の相関関係が見られた一方、吸着係数と炭素量の間に関係は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2018)に実施予定であったグラファイトを固定相とした逆液体クロマトグラフィー法の確立について、グラファイトやカラムの調達に予定より時間がかかったが、1種のモデル物質について良好なピークを得ることができ、吸着係数を測定するところまで到達した。カラム作成の再現性や希釈方法の検討など詳細の確認は次年度以降に実施することとした。 一方、グラファイトカラムの作成と平行して、2年度目(2019)以降に実施予定であった多数の炭素質吸着剤を用いた実験を繰り上げて実施した。多種類のバイオチャーの入手、モデル物質の吸着係数の測定、吸着係数の違いに影響を与える要因の検討について、研究を予定より早く進展することができた。 上記を合わせて勘案し、進捗状況は「概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
逆液体クロマトグラフィー法によるグラファイトの吸着係数の測定については、まず初年度(2018)に完了できなかった測定の信頼性の確認を行う。そして当初計画通り陰イオン性の物質について測定を行う。2年度目(2019)からは複数のHPLCシステムを立ち上げ、同時平行で保持時間データの測定が可能となるように実験室を整備する計画である。またこれまで検出器にはUVまたは蛍光検出器を用いてきたが、質量分析計を使うことができれば脂肪族化合物を含むより幅広い物質のデータを取ることができる。この可能性についても2019年度以降に検討したい。 多数の炭素質吸着剤の系統的比較については、既に検討済みのバイオチャーに加えてカーボンナノマテリアル等も含め、当初計画通り吸着実験を行う。
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