研究実績の概要 |
2021年度は陽イオン性のアミン類の物質2種類を用いて吸着実験を行った。初年度と同様に11種類の炭素質吸着剤を用い、バッチ試験により吸着係数Kを測定した。弱塩基性のモデル物質として用いた1-ナフチルメチルアミン(NMA)のK値は炭素質吸着剤間で最大、約10,000倍の違いがあった。NMAのK値は炭素質吸着剤の比表面積と高い相関関係を示した。強塩基性のベンジルトリメチルアンモニウム(BTMA)についても同様にK値を測定したところ、比表面積との相関は見られたものの、NMAと比べて相関は弱かった。pH依存電荷をもつNMAでは炭素質吸着剤の表面積が吸着に支配的な影響を及ぼすのに対し、永久電荷をもつBTMAでは表面積以外の静電的要因が吸着により強く関与していると考えられる。新規実験に加え、本年度は昨年度までに測定した吸着係数データの統計解析を行った。COSMO-RS理論に基づくσ-モーメント値を独立変数として用い、吸着係数を重回帰分析により解析し、吸着係数予測モデルの確立を試みた。一連の研究の中で重回帰予測モデルの適用範囲(applicability domain)の検証方法について新規の方法を着想したため、Linear solvation energy relationship (LSERs)を例に用いて検証を行った。適用範囲は従来のようにてこ比を用いて評価することに加えて、予測値の予測区間を計算することにより、モデルの外挿による予測誤差の増加に関してより定量的な情報が得られることが示された。本成果は国際的な学術論文雑誌に掲載された。
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