研究課題/領域番号 |
18K05208
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
奥村 雅彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (20386600)
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研究分担者 |
志賀 基之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (40370407)
荒木 優希 立命館大学, 理工学部, 助教 (50734480)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 粘土鉱物 / 機械学習 / 分子動力学法 |
研究実績の概要 |
今年度は、珪酸塩鉱物(粘土鉱物)に近い珪酸カルシウム水和物であるトバモライトという鉱物を対象に、機械学習分子動力学法シミュレーションを実施した。その結果、トバモライト9A、11A、14Aという3種類の鉱物について格子定数や、機械特性を評価し、実験値と近い値が得られることが確認された。さらに、トバモライト14Aを基にして作成した水和したトバモライト構造の機械学習分子動力学法シミュレーションを実施して水和層における水の拡散係数を評価し、実験結果と整合する計算結果を得た。本研究によって初めてトバモライトの機械学習ポテンシャルの作成に成功した。 機械学習ポテンシャルは原子配置の特徴量を入力としてエネルギーを出力する関数であるが、原子配置の特徴量が原子種数のべきに比例するため、これまで原子種数が3つ以上の系への適用例は限られていた。本研究の研究対象であるトバモライトは4種類(カルシウム、シリコン、水素、酸素)で構成される物質であるため、精度が高い機械学習ポテンシャルの構築は容易ではないと考えられたが、エネルギーに加えて力についてもトレーニングすることで、4原子種でも高い精度の機械学習ポテンシャルを構成可能であることがわかった。また、構造が複雑なほど原子配置の特徴量が多くの値を取るため、複雑な構造を持つ系に対する機械学習分子動力学法の適用は限られていたが、本研究によって固液界面という非常に複雑な構造を持つ系に対しても機械学習分子動力学法が適用可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最終的な目標は粘土鉱物の固液界面であり、その途中経過として構造が似たトバモライトの機械学習分子動力学法シミュレーションに成功したことは大きな前進である。この経験を基に、まずは粘土鉱物の機械学習ポテンシャルの作成を行い、粘土鉱物表面とバルクの水との固液界面に適用可能な機械学習ポテンシャルの開発を進めている。これらの系のように原子種が多く、複雑な構造を取る系に対する成功例がほとんどなかったため、原子配置の特徴量のためのパラメーターや学習データの選択方法などに多くの試行錯誤が必要であったため、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの試行錯誤によって機械学習ポテンシャル作成のノウハウが蓄積されつつあり、十分な量の教師データが作成できれば、目標を達成可能であると考えられる。ただし、固液界面の原子配置は非常に複雑であるため、十分な量の教師データを得るのに時間がかかると予想されるため、教師データの作成を継続的に実施する必要があると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた研究成果発表が当初計画通りに完了しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、研究成果発表のための英文校閲費等として使用する。
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