ラドンは希ガスの天然放射性元素で、鉱物などに含まれるラジウムを起源とする。ラドンはあらゆる場所に存在するため、これまでに健康影響、環境動態、トレーサ利用等の観点から、多様な研究の取り組みがなされてきた。本研究では、環境動態で最初のプロセスであるラドン散逸(鉱物内部から外部へ放出されること)の機構を理解するために、鉱物粒子の性質がラドン(Rn-222)や同位体トロン(Rn-220)の散逸に及ぼす影響を実験や計算に基づいて検討する。つまり、ラドン先行研究の広範なレビュー結果を踏まえて、特にラジウムの存在形態や鉱物の損傷に着目して、様々に処理された鉱物試料のラドン・トロン散逸能を解析す る。 今年度は、昨年度に行った加熱処理と散逸能の測定を、別の様々な鉱物サンプルに対しても実施した。その結果、いずれのサンプルでも温度の増加とともに散逸能が低下した。アニーリング効果で結晶構造が回復したことで、散逸抑制されたことが示された。数値計算の結果から、アルファ反跳に比べて固体内拡散による散逸の影響度は低いと考えられた。つまり、鉱物の結晶構造は、アルファ反跳やそれに伴う散逸現象に対して著しい影響を及ぼしうることが示唆された。
|