研究課題/領域番号 |
18K05211
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
芝崎 祐二 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90323790)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ポリマー / ポリフェノール / ミセル / 細胞毒性 / MTTアッセイ / アルブチン / 酸化重合 / 抗菌性 |
研究実績の概要 |
申請者らの開発した水媒体中におけるアルブチン(Arb)の酸化重合によりポリアルブチン(PArb)を合成し、これにアルキル基の導入を行い、ミセル形成能の付与を行った。アルキル基としてC1のメチル基からC18のオクタデシル基までの各置換基を有するアルキルイソシアネートを、塩基存在下、PArbと反応させることで、PArbのフェノール性OH基にアルキル基を定量的に導入することに成功した。この時、アルキル化率はフェノール性OHとアルキルイソシアネートの仕込み比より容易に制御可能であった。 合成した部分アルキル化PArbのミセル形成能は、界面張力法にて調べた。PArbでは、その濃度に関わらず水溶液の界面張力は一定であったが、アルキル化PArbでは、ポリマーの濃度と共に低下し、ある濃度で一定となった。この変曲点を臨界ミセル濃度(CMC)とし、アルキル種、アルキル化度の影響を調べた。その結果、C8基を30%導入したPArbで最小のCMC値である1.3mg/mLを達成した。 次にポリマーミセルのモルフォロジーを動的光散乱計(DLS)、透過型電子顕微鏡(TEM)観察にて評価した。SEM観察から、ミセルが特殊なワーム形状を有しており、アルキル置換種、置換度に応じてその形態を変えることが明らかとなった。 PArbならびに得られたアルキル化PArbの細胞毒性を調べるため、ポリマーを0~500μg/mLの濃度範囲でヒト由来のHeLa細胞、マウス由来のL929細胞を用いたMTTアッセイを行った。PArbは、いずれの濃度においてもまったく毒性を示さず無害であった一方、アルキル化PArbではやや細胞毒性が現れた。 ポリマーの抗菌性を大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して調べた。その結果、ポリフェノールとしては高レベルの抗菌性を有しており、高分子量化により抗菌性が増幅されることを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本プロジェクトでは研究代表者らが開発したアルブチンの水媒体中での酸化重合によるポリアルブチンの応用展開を目指して研究を進めているものです。当初、1.ポリアルブチンへのアルキル基の導入、ミセル形成能の付与、2.抗酸化特性、3.タンパク質のカプセル化、4.末端官能基化と共重合体の合成の4項目を目標として研究を進めてきました。3年間のプロジェクトで、現在、1を完結し、項目2,3に取り掛かっております。また、上記以外に、抗菌性に関しての試験を行い、ポリマー化することで抗菌性が増幅するという非常に興味深い高分子性があることを明らかとしました。優秀な大学院生も恵まれ、非常に幅広い研究展開を果たすことができています。以上の理由から、当初の計画以上に研究が進展しているとしました。
|
今後の研究の推進方策 |
予定通り、2.抗酸化特性、3.タンパク質のカプセル化、4.末端官能基化と共重合体の合成の4項目を順に進めて行きます。抗酸化試験に関しては、βカロテンブリーチング試験、DPPH試験などを行います。タンパク質のカプセル化については、ウシ血清アルブミンを用い、カテキンなどのポリフェノールと比較して、ポリアルブチンの吸着特性、吸着個所を明らかとします。また、ポリアルブチンの末端官能基化と共重合体化に関しては、ポリアルブチンの末端オキサジン化を経由してポリアミンとの共重合化、ポリカチオン化、詳細な抗菌試験などを展開していきます。
|