水媒体中におけるアルブチン(Arb)の酸化重合によりポリアルブチン(PArb)を合成し、これにアルキル基の導入を行い、ミセル形成能の付与、生体適合性試験、ポリマーの抗酸化、抗菌、タンパク質との相互作用の解明、遺伝デリバリーへの展開としてポリペプチドとの共重合を行った。アルキルイソシアネートをPArbのフェノール性OH基に反応させ、アルキル基を定量的に導入することに成功した。C8基を30%導入したPArbで最小の臨界ミセル濃度(CMC)である1.3mg/mLを達成した。ミセルのモルフォロジーは動的光散乱計(DLS)、透過型電子顕微鏡(TEM)観察にて評価した。SEM観察から、ミセルが特殊なワーム形状を有しており、アルキル置換種、置換度に応じてその形態を変えることが明らかとなった。 PArbならびに得られたアルキル化PArbの細胞毒性は、ヒト由来のHeLa細胞、マウス由来のL929細胞を用いたMTTアッセイにて行い、測定濃度において毒性を示さないことを明らかとした。ポリマーの抗菌特性は、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して調べた。その結果、ポリフェノールとしては高レベルの抗菌性を有しており、高分子量化により抗菌性が増幅されることを明らかとした。 ポリマーの抗酸化特性は、βカロテンの退色試験、ならびにDPPHのラジカル消去実験により実施した。いずれの測定方法においても、ポリアルブチンの抗酸化特性が明らかとなり、その特性はフェノール性OH量に由来することを明らかとした。 タンパク質のカプセル化は、ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて実施した。相互作用能力は茶カテキンの約8倍という高い値を示すことを明らかとした。 また、ポリアルブチンの糖のOHをメシル化、アミン分解によりアミノ基を導入し、これを開始剤とするグルタミン酸NCAモノマーの開環重合を検討し、目的とする共重合体の合成法を確立した。
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