昨年度の検討において,リオトロピック液晶相を発現する前駆体ポリアミド酸エステル(PAE)に剪断を印加して調製した一軸配向フィルムを,アルミニウムで作製した透過窓付きの試料板に四方を接着して固定した試料を準備し,温度可変-放射光広角X線回折(VT-SRWAXS)測定を実施したところ,昇温に伴って配向度Sが大きく低下した.この実験結果から,試料を基板上で固定すると,イミド化に伴って熱収縮する際に二軸延伸されるためであると考えた.そこで,試料の両端のみを固定して,同様のVT-SRWAXSを実施したところ,配向度の低下を抑制することに成功した.さらに,PAEがアミド部分に酸性度の大きいOH基を有する点に着目し,二価カチオン(水酸化バリウム)でイオン架橋後にイミド化する実験を実施したところ,さらに配向度の低下を抑制することができた.本系はかさ高い置換基がねじれを誘起し,これによって分子内の電荷移動を伴う電子遷移が抑制し,BPDA部分のみで生じる局所遷移になって蛍光発光が観測されるが,このかさ高い置換基が原因となって,配向度の維持が困難であった.しかし,上記の検討(フィルムの固定法,二価カチオンによる固定化)によって,配向を維持したままイミド化が可能となり,偏光蛍光発光能を有するポリイミドの作製法が確立された.
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