研究課題/領域番号 |
18K05214
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大石 理貴 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20376940)
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研究分担者 |
野村 信嘉 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70291408)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 立体規則性重合 / 有機金属錯体 / 超高分子量重合体 / 共重合 / 機能性高分子 |
研究実績の概要 |
2-ビニルピリジンの重合を中心に関連する重合体がユニークな性質を持つことに着目し、立体規則性ポリ(2-ビニルピリジン)やその誘導体を簡便に与える重合触媒の開発を検討し、立体規則性にとどまらず、分子量や共重合性の精密制御を目的としている。 置換型ビフェノールとイットリウム前駆体から簡便に得られる二核ビフェノラート錯体を開始剤に用いることで、高活性、高度なイソタクチック規則性でポリ(2-ビニルピリジン)が生成する。重合溶媒中での二核構造について、まず、DOSY法によって推定される分子量から金属錯体の核数を見積もった。その結果、二核構造を支持するデータが得られた。 次に、イットリウム以外にジルコニウム、ハフニウムのビフェノラート錯体を用いる2-ビニルピリジンの重合を試みた。重合活性はほとんど観察されず、イットリウムの優位性を見出した。 二核イットリウム錯体による他汎用モノマーの重合を複数試みた。検討した中で、ε-カプロラクトン、4-ビニルピリジンから活性、転化率は低いものの重合体を得た。このため、より開始剤効率の高いイットリウム/アルミニウム系開始剤による2-ビニルピリジン/ε-カプロラクトンのブロック共重を検討した。生成した重合体について、メタノール可溶な成分のε-カプロラクトン含有量は僅かであった。また、メタノール不溶成分はポリ(ε-カプロラクトン)のみであった。この原因は、連鎖移動、アルミニウム種による重合開始の可能性が指摘される。 汎用モノマーに重合活性を(潜在的に)示す有機イットリウム錯体を合成し、2-ビニルピリジンの重合も新規に検討した。メタロセンやスチレンを精密重合するハーフメタロセンは重合活性を示したが、活性、立体規則性の点でビフェノラート錯体と比較して大幅に低いものであった。一方、NO配位子を持つ錯体は良好な活性を示し、大いに期待できる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、2-ビニルピリジンの重合を中心に、親電子性金属の種類や支持配位子の異なる様々な錯体について重合性を検討することができ、初期に提案した活性錯体としてキレート配位子を持つ有機イットリウム錯体が高性能を有していることが確認できた。さらに、イットリウムの低配位数、特に、THFの配位を低減した構造が高活性を得るために重要であるという知見も得られた。 実績概要に示したNO配位子を持つ有機イットリウム錯体としては、具体的に、フェノラートを含むサランやサリチルアルジミンに着目し、時に、後者では錯体合成における置換基効果が得られた。また、窒素上の置換基の選択によってTHFの配位していない五配位錯体が形成し、単離と単結晶X線結晶構造解析による構造の確認を行うことができた。さらに、mm = 80%程度のイソタクチックに富むポリ(2-ビニルピリジン)が生成することを見出し、良好な開始剤効率を観察するができた。本錯体の類縁体が、水素雰囲気下で二核ヒドリド構造を生成する点やε-カプロラクトン、ラクチドの環状ラクトン類の開環重合に活性を示す点を考慮すると期待した成果がおおむね得られていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
重合開始剤としてイットリウム サリチルアルデヒド錯体を中心に、2-ビニルピリジンと環状ラクトン類との共重合体の合成を行う。この際、特に、2-ビニルピリジン成分の含有量、立体規則性の2つのパラメーターを変えて試料を作製し、得られた重合体について熱分析やミクロ層分離などに関するデータを収集し、比較する。 これまでの結果より、超高分子量立体規則性ポリ(2-ビニルピリジン)の生成では、生成ポリマーの低溶解性のため、重合中にポリマーが析出してしまうことが1つの問題となっている。溶解性向上は不可欠であり、2-ビニルピリジン モノマーへの置換基導入とそれらの新規モノマーの重合を検討する。具体的には、主鎖の立体規則性制御に大きく影響しないと考えられる4位あるいは5位にアルキル基の導入された2-ビニルピリジンについて検討する。
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