研究課題/領域番号 |
18K05215
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高木 幸治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303690)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機触媒 / メタルフリー / カチオン重合 / ハロゲン結合 |
研究実績の概要 |
精密カチオン重合は、構造が明確なポリマーを生成する手法として開発され、次世代ポリマー材料創製のコア技術としてさらなる貢献が期待されている。しかし、空気中で金属触媒の取り扱いが困難であることに加え、ポリマーに残存する金属不純物が材料性能・機能の経時劣化を招くため、精密重合ポリマーの高品質を長期保証する取り組みが重要である。一方、工業的観点からは、揮発性有機溶剤を代替する水媒体中での重合が好まれている。原子利用効率が高く廃棄物を出さないモノづくりの観点から、官能基の保護を必要としない機能性ポリマーの合成も望まれている。本研究では、代表者が独自に開発したハロゲン結合を形成する有機触媒による精密カチオン重合を発展させ、金属を用いず、水媒体中で、機能性ポリマーを簡便合成する。 これまで、イソブチルビニルエーテルの重合に用いた二官能性ヨードイミダゾリウムは、窒素上にアルキル基を導入していた。今回、触媒活性の向上を狙ってエステル基を組み込んだ触媒では、10秒ほどでパラメトキシスチレンのカチオン重合が完結した。また、これらのヨードイミダゾリウム化合物は、蒸留精製していないジクロロメタンやアセトニトリル溶媒(少量の水を含むと考えられる)中でも重合活性を示した。一方、10%の水を加えた場合は、重合が進行しなかった。 過去に実施したハロゲン結合触媒によるイソブチルビニルエーテルのカチオン重合では、主鎖からのアルコール脱離による連鎖移動が問題であった。今回、当該服反応が原理的に起こらないヘキシロキシアレンのカチオン重合を検討した。開始剤の種類により生長末端のハロゲン原子を選択すれば、重合中期までは制御された重合が進行することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、①新しいハロゲン結合有機触媒の開発、②含水環境下におけるスチレン誘導体のカチオン重合を行った。また、機能性ポリマーとしての利用が期待できる③アルコキシアレンのカチオン重合も検討した。 ①では、重合条件の最適化が必要であるものの、ハロゲン結合触媒の高活性化に向けた設計指針を得ることができた。ヨードイミダゾリウム化合物では、触媒の分解が懸念されていたが、より安定なブロモ誘導体でもハロゲン結合を介した重合が可能であると期待される。②では、溶媒の脱水を必要としない簡便なカチオン重合の可能性を見出した。③は、申請時の研究計画にはなかったが、当該重合システムを用いて機能性ポリマーの合成にチャレンジした。精密重合という観点では、まだ課題が残るものの、一方のビニル基のみを重合させ、他方がほぼ定量的に残ったポリマーを合成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で用いるハロゲン結合触媒は、添加剤存在下でジフェニルメタノールの炭素ー酸素結合を切断、活性化できることが報告されている。これを踏まえて、スチレン誘導体の水付加体を開始剤とするパラメトキシスチレンのカチオン重合を行う。水媒体中での重合や、パラヒドロキシスチレンをモノマーとした機能性ポリマーの合成にも取り組む。一方、ハロゲン結合は、ソフトなルイス酸としてチオウレア化合物とも相互作用することが知られている。これを利用して、ハロゲン結合触媒と水素結合触媒をハイブリッドさせたシステムで環状エステルの開環重合にも挑戦したい。 本研究課題は、次が最終年度であるので、学会での成果発表に加え、ジャーナル論文への掲載に向けても努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)関連する研究について別途財団法人より研究助成金を獲得することができたこと、また合成ルートの工夫や実験の小スケール化により消耗品費を抑えることができたため (使用計画)次年度使用額は主に消耗品費に充てると同時に、研究がさらに加速するよう環境整備に努める
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