研究課題/領域番号 |
18K05216
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
松岡 真一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10432288)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ビニル重合 / ルイスペア / 水溶媒 |
研究実績の概要 |
本研究課題において、水を溶媒として用いた新しいビニル重合系の開発を行っている。特に、ルイス酸として、水中でも失活せず、モノマーのカルボニル基を活性化できる金属トリフラート類を用い、適宜ルイス塩基を添加することで、高活性化を目指した。具体的には、Ph3Pをルイス塩基に、Sn(OTf)2もしくはCu(OTf)2をルイス酸に用い、水中室温にて、メタクリル酸2-メトキシエチルの重合反応が進行し、高収率で数平均分子量(Mn)が数万以上のポリマーが得られることを見出した。溶媒効果を検討したところ、様々な有機溶媒よりも水が最も良好な溶媒であった。アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸ブチル、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、アクリルアミド、4-ビニルピリジンも同様の系で重合反応が進行した。アクリルアミドは水素移動重合ではなく、ビニル重合体が得られた。モノマー適用範囲の広い触媒系であることが明らかとなった。(メタ)アクリル酸エステルはCu(OTf)2が、アクリルアミド類はSn(OTf)2が最適なルイス酸であった。その中でも特に、アクリル酸2-メトキシエチルは高活性であり、5mol%のルイス酸と塩基の組み合わせで、3分で重合が完結し、Mn=93,000、Mw/Mn=4.0のポリマーが得られた。ルイス塩基(Ph3P)のモル量を増加させると分子量が低下した。また、MALDI-TOF-MS測定から、Ph3P末端が観察されたことから、Ph3Pが開始剤として機能していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、水溶媒中における新規重合系の開拓に成功した。具体的には、1)重合条件の最適化により水中、室温にて予想以上に高活性で高速な重合系であること、2)モノマー適用範囲が広く比較的低反応性のビニルピリジンでも重合反応が進行すること、3)Ph3Pが開始剤として機能していることを明らかにした。1年間で研究を大きく進展させることができている。
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今後の研究の推進方策 |
モノマーの適用範囲の拡張と重合の高活性化を引き続き検討する。さらに、重合機構の解明を行う。特に、活性種が初期に考えていたアニオン種であるのか、もしくはラジカル種であるかを明らかにする。今年度の実験において、高速な重合系であることが分かったが、このことからフリーラジカルが成長種である可能性も考えられる。このために末端構造の解析やラジカルやアニオン重合補足剤やRAFT試薬の添加などの実験を行う。特に重合補足剤の添加実験においては、それ自身がルイスペア触媒と反応しない試薬を選択する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成実験に必要な試薬・溶剤類の消耗品費、測定機器利用料の一部を、学内の競争的資金や財団からの寄付金で賄うことができたため。次年度以降も合成実験に必要な、試薬・溶剤類、ガラス器具、合成実験用補助機材類を購入する費用として使用する。
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