研究実績の概要 |
前年度まで実施してきたルイスペア触媒(PPh3/Cu(OTf)2もしくはPPh3/Sn(OTf)2)と水を用いたビニルモノマーの重合について,その機構解明や適用範囲の拡張,その制御法について,調査を進めた。まず,活性プロトンを有するアクリル酸とアクリル酸2-ヒドロキシエチル,(メタ)アクリルアミドをモノマーとして用いた。これらのモノマーは,トリアルキルフォスフィン存在下で水素移動重合が進行し,ポリエステルやポリアミドが得られることが知られているが,今回の重合反応からは,ビニルポリマーが得られた。このことはoxa-, aza-マイケル付加反応に基づく求核的な反応ではなく,ラジカル重合機構であることを支持する結果である。例えばアクリルアミドはルイスペア触媒(5 mol%ずつ)により45%の収率で,Mn=7600のビニルポリマーが得られた。次に,このルイスペア重合系の制御法を開発するため,メタクリル酸2-メトキシエチル(MEMA)の重合系にRAFT剤を添加した。RAFT剤不在下ではMn=63000, Mw/Mn=2.30のpoly(MEMA)が得られるが,この系にトリチオカーボネート系のRAFT剤を5mol%添加すると,Mn=20000, Mw/Mn=1.28と分子量,分子量分布ともに減少した。さらにRAFT剤の量によって分子量を制御することができた。また,メタクリル酸エステル類とRATF剤の水に対する溶解性が重合制御に重要な要因であると考察された。以上の結果は,ルイスペア触媒とモノマーからラジカル種が生成し,そこにRAFT剤が作用することで重合制御が可能になったと考察される。
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