研究実績の概要 |
ポリ(1,6-ヘキシレンアジペート)グリコール、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-ブタンジオールから成るポリウレタンにおいてハードセグメント量の異なるポリウレタンを用いて溶融結晶化を行ったところ、適当な組成でマルテーゼクロスの明瞭な球晶を形成させることができた。得られた孤立した球晶の二軸延伸過程およびその回復過程を偏光顕微鏡により観察したところ、延伸により同じ形状を保持したまま大きくなるが、マルテーゼクロスが消失したことから二軸延伸に伴い放射状に形成されているハードセグメントの配列の秩序性が低下することがわかった。このような構造変化が生じたにも関わらず、二軸延伸後に変形回復させることでマルテーゼクロスが再び現れた。二軸延伸前後のHv光散乱測定を行ったところ、延伸前に現れていた四つ葉のクローバー状の散乱像が延伸・回復後に円形の散乱像へと変化したことから、二軸延伸により球晶内部のマイクロメートル次元のフィブリル構造の秩序性が低下することが示唆された。それに対して、二軸延伸前に円形であった小角X線散乱像が円環状へと変化したことから、二軸延伸によりナノメートル次元のハードセグメントの配列の秩序性は向上することが明らかになった。 高ひずみまで二軸延伸を行うと、球晶同士が衝突して、球晶間に存在していたマトリックスが消失した。また、二軸延伸後に延伸前には存在しなかったマイクロメートル次元のフィブリル構造がマトリックス中に新たに形成されることが見出された。このような現象は一軸延伸では現れず、二軸延伸に特異なものと考えられる。
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