研究課題/領域番号 |
18K05234
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
今野 勉 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (70303930)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 含フッ素アルキン / 三量化反応 / ニトリル / コバルト触媒 |
研究実績の概要 |
連鎖移動剤にシアノ基含有ペルフルオロアルキルを用いた,テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体は,劣化原因となる脆弱な炭化水素基を持たないため,極めて安定なゴム原料であり,シアノ基部位を利用した架橋によってフッ素ゴムが合成されている。この際,共架橋剤には脆弱な炭素水素系置換基を有する化合物が用いられるため,得られるゴムには共架橋剤に由来する脆弱な炭化水素基が存在し,この部位からの分解が起こる。ゆえに,そうした脆弱な置換基を持たない,究極の共架橋剤の開発によるフッ素ゴムの耐性向上が強く求められている。本研究では,架橋部位にペルフルオロアルキレン基やフェニレン基しか持たないフッ素ゴムに着目し,「これらをいかにして効率的に合成するか」を本研究のテーマとした。また,共架橋剤の分子構造と架橋反応性との関係,フッ素ゴムの耐性性能との関係といった基礎的かつ学術的知見を基に,精密な分子設計を行い,超耐性フッ素ゴムの合成に挑むこととした。 初年度は,アルキン2分子とニトリル1分子間の交差三量化反応がうまく進行するかどうかを見極めるため,含フッ素末端ジインと非フッ素系ニトリル化合物との三量化反応により,対応するピリジン合成をモデル反応に選択した。 本反応に関し,筆者はすでに,ロジウム触媒を用いれば上記反応が達成できることを報告している。しかし,その収率が極めて低く,効率性の向上が強く求められていた。そこで様々な触媒系を用いて,詳細に反応条件の検討を行ったところ,二価のコバルト触媒/金属亜鉛系の条件を用いることで,反応が極めてスムーズに進行し,対応するピリジン環誘導体が高収率で得られることがわかった。この反応は様々な含フッ素ジイン誘導体ならびに様々なニトリル化合物に適用することが可能であり,ゴム原料を用いた架橋反応にも適用できる可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトにおいて,最大の難関を3つ設定している。すなわち,(1)アルキン誘導体とニトリル誘導体間の交差三量化反応がスムーズに進行するか。進行しない場合,反応条件の詳細な検討&探索(2)架橋剤として,実際にゴム原料に対して用いる全フッ素化末端ジエンを,いかに効率的に合成していくか。その合成開発の検討(3)ゴム原料を用いる場合,三量化反応は進行するか。反応系が異なることに由来する,反応条件の再検討の必要性 上記の3つの項目はいずれも難易度の高いものである。特に,初年度として設定している項目(1)に関しては,すでに筆者がロジウム触媒を用いた反応開発を行っており,収率が極めて低いことを報告していたため,その開発にはかなりの苦労を要することが予想された。実際に多くの触媒系をトライアンドエラーで探索し,多くの失敗を重ねたが,最終的には,モデル反応としての交差三量化反応は,新たにコバルト触媒/金属亜鉛系を用いることで,極めてスムーズに進行することを明らかにすることができた。すなわち,本プロジェクトの大きな難関を1つクリアできたと言えよう。ただし,実際のゴム原料とアルキンとの架橋反応においては,ゴム原料がペルフルオロ化合物であることから,ニトリル化合物もフッ素系ニトリル化合物を用いる必要があり,今後,そうした基質の反応を検討する必要があろう。 以上の理由から,本プロジェクトは概ね良好に進行していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
上記にも記したが,本プロジェクトにおける最大の難関は3点あると予想している。すなわち,(1)アルキン誘導体とニトリル誘導体間の交差三量化反応がスムーズに進行するか。進行しない場合,反応条件の詳細な検討&探索(2)架橋剤として,実際にゴム原料に対して用いる全フッ素化末端ジエンを,いかに効率的に合成していくか。その合成開発の検討(3)ゴム原料を用いる場合,三量化反応は進行するか。反応系が異なることに由来する,反応条件の再検討の必要性 このうち,(1)は,研究実績の概要にも示した通り,初年度に,概ね達成することができた。ただし,この場合,含フッ素末端ジインと非フッ素系ニトリル化合物との交差三量化反応を達成することができただけであり,実際のゴム原料と含フッ素末端ジインとの架橋反応においては,ニトリル化合物としてフッ素系ニトリル化合物を用いることとなる。ゆえに、初年度に検討することのできなかった,含フッ素ジインと含フッ素ニトリル化合物との交差三量化反応を,2年目において,まず先に検討する予定をしている。 この検討の後,実際にゴム原料に使用することを予定している,架橋剤の合成に着手する予定である。すなわち,合成を予定している化合物としては,ペルフルオロー1、4―ビス((3、4―ビス(3―ブチンー1―イル)フェニル))ブタンであり,1、4―ジヨードペルフルオロブタンや4―ブロモ-3、3、4、4―テトラフルオロ-1―ブチンを用いたクロスカップリング反応を駆使して合成していく予定である。
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