研究実績の概要 |
昨年度、シアノ基含有フッ素ゴムに見立てた各種ニトリル化合物に、1,2-ジクロロエタン溶媒中、3 mol%のCoCl2(phen),10 mol%の亜鉛金属と臭化亜鉛存在下、各種含フッ素ジインを作用させたところ、[2+2+2]環化付加反応が極めて良好に進行することを見出した。とりわけ、ペンタフルオロベンゾニトリルといった強力な電子求引基をもつニトリルの場合でも、反応が良好に進行したことは、同様の電子構造を有するシアノ基含有フッ素ゴムを用いた場合の反応に対し、光明が見えたと言える。 そこで、実際の架橋剤として、両末端にジイン構造をもつ全フッ素化架橋剤を合成する前に、上記ゴム原料が[2+2+2]環化付加反応の基質となりうるか否かを確かめるため、ゴム原料、ならびに上記モデル反応にて用いた1-(3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン-1-イル)-1-(2-プロピン-1-イルオキシ)シクロヘキサンとの[2+2+2]環化付加反応を取り上げて検討した。しかし反応はまったく進行せず、ピリジン環生成の痕跡は認められなかった。フッ素系溶媒を用いるなど、各種反応条件を検討したが、満足な結果は得られなかった。 一方で,高効率な[2+2+2]環化付加反応を経由してピリジン環構築が達成できたのは、コバルト金属と含フッ素アルキンとの強い相互作用(π逆供与)の発見に起因することを鑑み、この相互作用を活用し、各種コバルト錯体存在下、含フッ素アルキンに、8-キノリニルベンズアミド誘導体、ヒドロキシベンジリデンアミン誘導体、2-ヨードアリールケトン、ならびに2-ホルミル芳香族ボロン酸を作用させ、環化付加反応も検討した。その結果、3-あるいは4-フルオロアルキル化イソキノリノン,3-フルオロアルキル化イソキノリン,ならびに2-あるいは3-フルオロアルキル化インデノールを高効率かつ選択的に得られるという知見を見出した。
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