研究実績の概要 |
側鎖にアルキルシトシンとアルキルアンモニウム塩構造をもつカチオン性オリゴフルオレン(OF-1)と側鎖にアルキルシトシンとアルキルカルボン酸塩構造をもつカチオン性オリゴフルオレン(OF-2)を、Pd錯体触媒を用いたカップリング反応を利用して合成し、1H NMR, IR測定により同定した。OF-1水溶液の発光強度は、テロメアDNA:(TTAGGG)m (T=チミン、A=アデニン、G=グアノシン;m = 2, 3, 4, 6)の添加量に比例して減少した。この結果は、ドナー(OF-1)とアクセプター(DNA中の核酸塩基)間で光誘起電荷移動(PCT)が起こったことで説明できる。つまり、ドナーのLUMOに光励起したスピンは、PCTによりアクセプターのLUMOに移動する。このスピンは、閉殻しているアクセプターのHOMOに移動することができず、結果として消光する。OF-1のHOMOとLUMOレベルがT, A, Gのそれらよりも高いことは、サイクリックボルタンメトリーとUV-vis測定から確認した。OF-1とは対照的に、OF-2水溶液に(TTAGGG)m (m = 2, 3, 4, 6)を一定量ずつ添加すると、凝集誘起発光増大(AIEE)現象により、発光強度が増大した。OF-2でAIEEが起こることは、OF-2の良溶媒(水)と貧溶媒(アセトン)の割合を変えた溶液の蛍光強度が、貧溶媒の割合が大きくなるにつれて増大したことにより確認した。(TTAGGG)m添加によるOF-1とOF-2の発光強度変化がDNA鎖長(m)に依存したことから、OF-1とOF-2のテロメアDNA鎖長計測精度は6であり、既存法の制度(数千塩基)と比較して、圧倒的に高精度であることがわかった。また、本センシングシステムでは、PCRが不要で、蛍光測定時間内(数分)でテロメアDNA鎖長の計測が可能であった。
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