研究課題/領域番号 |
18K05242
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
原口 和敏 日本大学, 生産工学部, 研究所教授 (10373391)
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研究分担者 |
木村 悠二 日本大学, 生産工学部, 助教 (40717451)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲル / ナノコンポジット / 有機-無機ハイブリッド / クレイナノシート / 接着 / 貴金属ナノ粒子 / アルコール溶液 / 粘度 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機―無機ネットワーク構造およびクレイ-高分子(又は媒体)間相互作用を独自の手法で設計・制御して、新規なナノコンポジットゲル(NCゲル)の開発および機能発現を目指した研究を推進した。本年度の主な実績を以下に示す。 (1)NCゲルの特異的機能の解明と機能最大化に関しては、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPA)などを高分子成分とするNCゲルが、親水性の無機多孔質体(セラミックやコンクリートなど)および多孔質メンブレンのいずれに対しても、強力な瞬間接着挙動を示すことを見出した。特に、NCゲルはこれらの面に対して界面が剥離しないCohesive Failureを示し、レンガやコンクリートなどがNCゲル小片により接合されること、更に、接着後、少し乾燥することにより特に強力な接着強度が得られることを明らかにした。また、PNIPA-NCゲルは温度応答性の可逆的接着挙動を示した。これらのNCゲルの瞬間強力接着特性の発現メカニズムについても考察した。 (2)新規NCゲルの合成に関しては、特定の親水性高分子とクレイの各水溶液を混合するのみで、0.1~0.3wt%の低ポリマー濃度において特異的なゲル化挙動が発現することを見出した。また、第三線分の添加による粘度の制御についても新たな知見を得た。 (3)三成分系NCゲルの創製では、貴金属化合物(白金塩など)および卑金属化合物をNCゲルと接触させることで、クレイナノシートの還元作用により、有機-無機ネットワーク中に貴(卑)金属ナノ粒子を担持したNCゲルが室温で得られることを明らかにした。また、その触媒活性について評価した。 (4)クレイ-高分子およびクレイ-媒体間の相互作用による粘度変化を物理化学的視点から検討し、混合液におけるクレイおよび媒体の水和による異常粘度増加挙動のメカニズムについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とした有機―無機ネットワーク構造およびクレイ-高分子(又は媒体)間相互作用の設計・制御による、新規ナノコンポジットゲル(NCゲル)の開発および機能発現について、幾つかの新たな成果を得た。成果を4報の論文・総説にまとめ、投稿し掲載された。また、10件の招待講演・発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
有機―無機ネットワーク構造およびクレイ-高分子(又は媒体)間相互作用の設計・制御による新たなナノコンポジットゲル(NCゲル)の開発および機能発現に関する研究を更に進める。具体的には、下記のような推進方策に基づき進める。 (1)NCゲルの特異的機能の解明と機能最大化に関しては、NCゲルの欠点の一つである乾燥性の制御に取り組む。特に、NCゲルの特長である透明性や力学物性を維持した非乾燥性NCゲルを探求する。 (2)新規NCゲルの合成に関しては、親水性高分子とクレイの各水溶液の混合によるゲル化挙動を広範囲な高分子について検討し、最適な高分子-クレイ混合系を確立する。また、超膨潤性NCゲルの可能性についても探索する。 (3)NCゲルの機能性開拓においては、流動化ゲルやインジェクション可能ゲルへのチャレンジを行う。 (4)クレイ-高分子およびクレイ-媒体の相互作用による混合液の異常粘度発現については、対象とする高分子や媒体の範囲を広げ、異常粘度発現挙動の一般化およびメカニズム解明に挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
従来の繰り越し在庫により、物品費(消耗品)の購入が少なくなったため。17万円弱の繰り越しが生じた。 次年度は薬品やガラス器具等の在庫も少ないため、また、小型機器(撹拌器やマイクロシリンジ)などの購入も必要なため、繰越金額を主に物品費(消耗品)に使用する予定。
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