研究課題
本研究では、有機-無機ネットワーク構造およびクレイ-高分子(又は媒体)間相互作用を独自の手法で設計・制御して、新規なナノコンポジット(NC)ゲルの開発および機能発現を目指した研究を推進している。本年度の主な実績を以下に示す。(1)NCゲルの特異的機能の解明と最大化に関しては、NCゲルの主要成分(クレイ水分散液)のpHを変化させることで、特定pHで大きな粘度極大(約1000倍)を示すこと、更に、この粘度極大を示す分散液が静置状態において、複雑な時間依存粘度変化を示すことを初めて見出した。また、かかる粘度変化が撹拌方法、強さ、繰返し回数により、更にクレイ種や温度により変化することを解明した。かかる異常粘度挙動に対して、クレイナノシート(CNS)の作るネットワーク構造の構築と破壊(CNSの動的変化))に基づく機構を推定し、成果をまとめて論文投稿した(現在、投稿中)。(2)新規NCゲルの合成に関しては、生体関連材料ヒドロキシアパタイト(HAp:骨成分)を選択し、NCゲルネットワークへのHAp導入を交互浸漬法により行った。導入量や導入形態の制御により、白色の高力学物性(高強度・高弾性率)を有するHAp複合NCゲルを得た。(3)多成分系NCゲルの創製研究では、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液を凍結解凍して作られるPVAゲルに、第二高分子の化学架橋ネットワークおよび有機/無機ネットワークを相互侵入網目として導入することにより、力学物性および透明性の制御された多成分系NCゲルを合成することに成功した。(4)水―特定アルコール水溶液の粘度の詳細検討により、水より低い粘度を示す水溶液を145年ぶりに発見した。また、その発現機構について、密度や部分モル容積の変化を含めて考察し、水溶液の構造と粘度に関する新たなメカニズムを提唱した。本研究成果を論文にまとめ、日本化学会の欧文誌に掲載された。
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Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: 94 ページ: Advanced Paper
10.1246/bcsj.20200396