研究課題/領域番号 |
18K05243
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
須賀 健雄 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (10409659)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超親水性 / 両性イオン / CO2固定 / ジアミン / 防汚性 / 防曇性 |
研究実績の概要 |
本研究は、水に浸漬するだけで僅かな水中濃度(300 ppm)のCO2を自発的に取り込み、海洋生物の付着防止に有効な超親水性を発現する高分子コーティングの創出を目的とする。昨年度までにCO2捕捉・保持能を飛躍的に向上したジアミン誘導体の分子構造要件を整理済みで(項目1)、1,3 級及び1,2級で、スペーサー数が2となるジアミン部位を導入した各ポリマーコーティングを作成、親水化挙動を明らかにしている(項目2)。令2年度は、前駆ポリマーのエポキシ導入率によりジアミン導入数を上げ、合成のより簡便な2,3級ジアミンポリマーでも溶存CO2を捕捉し、超親水化できることを明らかにした(項目2)。また1,2級ジアミンを20mol%導入したコーティングでは、水中ではなく湿度制御した大気下でもCO2により親水化し、防曇性を示すことを明らかにした。なお超親水性層厚みはジアミン濃度および架橋密度で調整できた(項目3)。海水浸漬試験による生物付着防止・防汚効果の実証については、ポリマーマトリクスに架橋構造を導入すると藻類の付着が見られ、ジアミン由来の超親水化だけでは付着防止効果は不十分であった。一方、架橋構造を導入しないジアミンポリマーではジアミン濃度に応じて溶解性を調節できCO2捕捉による溶解型コーティングとして機能した(項目4)。以上、計画に沿ってジアミンポリマーコーティングの側鎖および主鎖に関する設計指針を蓄積できた。次年度は水中だけでなく大気下での超親水化挙動についてより定量的に評価するとともに環境適応型コーティングとしての構造-機能相関を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要にも記載の通り、昨年度までにCO2固定・捕捉能を有するジアミン誘導体の分子構造要件(項目1)およびジアミン部位を含む高分子コーティングの合成・作成手法(項目2)も確立済みであり、今年度は2,3級ジアミンポリマーでもジアミン濃度の調整で超親水化できることを明らかにした。さらに水中だけでなく大気下でもCO2捕捉に基づく親水化挙動を見出し、防曇性コーティングとしての適用可能性を明らかにした。項目(3)の固液界面での挙動については、液中AFMにて追跡、描像した。項目(4)の防汚性に関しては、架橋したジアミンポリマーでは藻類の付着が見られたが、未架橋のポリマーでは低減できた。防汚コーティングとしてはジアミン濃度などの組成、相構造など最適化が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
実海水浸漬試験を継続実施するとともに、水中だけでなく気固界面でもCO2捕捉可能なジアミンポリマーの分子設計要件と組成を最適化する。藻類付着に有効な成分も第二成分として導入した新規ジアミンポリマーコーティングを作成し、海洋生物の付着防止能との相関を明らかにする。また、中性子反射測定では、湿度制御した試験槽を用いて気固界面でのCO2捕捉と膨潤挙動を描像する。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残金が生じたが次年度直接経費(消耗品)に充当する。
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