研究実績の概要 |
本研究は、水に浸漬するだけで僅かな水中濃度(300 ppm)のCO2を自発的に取り込み、海洋生物の付着防止に有効な超親水性を発現する高分子コーティングの創出 を目的とする。昨年度までにCO2捕捉・保持能を飛躍的に向上したジアミン誘導体の分子構造要件を整理し(項目1)、1,3 級及び1,2級で、スペーサー数が2となるジアミン部位を導入した各ポリマーコーティングを作成、親水化挙動を明らかにした(項目2)。さらにジアミン置換数を上げることで、より簡便に合成できる2,3級ジアミンポリマーでも溶存CO2を捕捉し、超親水化できることを明らかにした(項目2)。また1,2級ジアミンを20mol%導入したコーティングでは、水中ではなく湿度制御した大気下でもCO2により親水化し、防曇性を示すことを明らかにした。CO2付加による超親水性層の経時的な形成は調湿セルを用いてCO2濃度、湿度を制御した中性子反射測定より追跡できた(項目3)。水中だけでなく大気中でも徐々にCO2固定し親水化することを明らかとなったため、屋外暴露試験に供した。初期では超親水性を示したが、光劣化したため、屋外用途の防汚コーティングとしては光安定剤・酸化防止剤などの併用が必要であった。以上、計画に沿ってジアミンポリマーコーティングの側鎖および主鎖に関する設計指針を蓄積できた。水中だけでなく大気下での超親水化挙動についてもより定量的に評価するとともに環境適応型コーティングとしての構造-機能相関を明らかにすることができた。
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