研究課題/領域番号 |
18K05245
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
森川 浩 神奈川工科大学, 工学部, 准教授 (10434416)
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研究分担者 |
山口 淳一 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (00256661)
本九町 卓 長崎大学, 工学研究科, 助教 (70404241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗酸化物質 / ラジカル / 加水分解 / モノマー / ポリマー |
研究実績の概要 |
特定部位の分解によって、抗酸化物質を放出できる担持系の構築を目指している。 まず、昨年度に少量合成できたモノマーAと引き続くポリマーBの大量合成を試みた。化合物AとBは、加水分解可能なアセタール部位を有している。昨年度の結果をもとに、モノマーA及びAA(Aの類縁体)を合成することができた。昨年度同様に化合物Aの水溶性は悪かったが、化合物AAは分子内にヒドロキシ基を有しているために十分な水溶性が確保できた。この化合物AAを用いて、水溶液中で酸加水分解反応を起こすこと、分解によって抗酸化物質を放出することを確認した。定性的ではあるが、pH5下、約9日後に、分子内のすべての抗酸化物質が放出された。この分解挙動をより詳細に評価するため、ガスクロマトグラフィーGCを用いて、AAを含む分解反応液の評価を試みた。しかし、GC内の高温環境下で、化合物AAのアセタール部位が分解されて定量的な評価はできなかった。 化合物A及びAAについて、昨年度は問題視されなかった副生成物が混入し、この除去のため、その大量合成は中程度の成功にとどまっている。 引き続き、昨年度の結果を参考にして、化合物AからポリマーBを合成することができた。ポリマーBを用い、昨年度は評価できなかった加水分解性の評価を試みた。しかし、緩衝液を用いてポリマーBの酸性溶液を調製しようとしたが、作成溶液のpHが安定しなかった。その骨格内にエチレンイミン部位を有しているためと考えられる。塩酸を加えてポリマーBの水溶液を強酸性下(pH2)にしたところ、すぐに抗酸化物質の放出が確認された。 また、新たに別の系として、抗酸化物質としてL-アスコルビン酸を用いる化合物群を対象とした。L-アスコルビン酸とフェニルボロン酸を混合し、アスコルビン酸内に2つあるジオール部位とボロン酸とのエステル化挙動を評価できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はなかった合成過程での副生成物の混入の問題が生じ、化合物の大量合成は中程度の成功に留まったままである。引き続き条件検討を必要とする。いくつかの化合物に対して加水分解性の評価を行ったが、昨年度及び今年度の結果から、弱い酸性溶液でもそれ自身が分解することなく、抗酸化物質が放出されることは一定の成果である。分解挙動および抗酸化物質の放出挙動の定量的な評価は、GC測定からは困難であることが判明した。別の分析系が必要である。 ポリマーBを中程度の量で合成することができたが、分子内に塩基性部位があると、その水溶液のpH調整を難しくすることがわかり、このことから系全体の分子骨格を再構築する必要性が生じた。 別の系として試行したアスコルビン酸の化学修飾について、定性的ではあるもののジオール部位との反応特性を正しく評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
化合物AAの分解特性はそれ単独でも十分な研究対象となるために、GCでなくHPLCを用いて、分解挙動を評価する。 モノマーAから合成する物質を化合物Bとすることは中断する。代替として、モノマーAAのヒドロキシ基をカルボン酸系ポリマーと縮合させることによってポリエステル化合物を得る。これらを中心とした化合物群をターゲットとする。 アスコルビン酸の化学修飾について、そのジオールの反応性に着目して、エステル化を中心とした化学反応を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
副生成物の混入や予定以下の合成量の状況に遭遇し、合成条件や精製条件の検討に想定外の時間を要した。このために、予定していた化合物群の一部を合成できなかった。これに伴い、薬品代の使用状況が当初の想定をわずかに下回った。引き続き、次年度に一部の化合物合成を行うため、残額をこれにあてる予定である。
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