研究課題/領域番号 |
18K05248
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小村 元憲 沼津工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (90401512)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミクロ相分離 / 巨視的配列化 / 液晶 / ラビング / 配向転移 / 偏光照射 |
研究実績の概要 |
ボトムアップ式のナノ加工法の代表であるブロックコポリマー(BC)が形成するミクロ相分離ナノ構造の応用研究の中で,トップダウン式ナノ加工法によるガイドパターンを用いずに巨視的配列に成功した例はない.本研究では,液晶性BCの液晶性を2段階で利用することにより,巨視的に同一方向に配列した垂直配向ナノシリンダー(NC)配列体を作製し,構造微細化を施すことにより,安価で大量生産性に優れる超高密度の磁気記録媒体の作製へつなげる.具体的には,液晶性BCの特徴であるNCの垂直配向性を,表面封止法により一度消し,ラビング法による液晶配向に誘起された巨視的配列平行NC構造を得る.表面封止層を除去し再熱処理を施すことにより,液晶性BCの特徴を再発現させ,巨視的配列平行NC構造を自己ガイドとした巨視的配列垂直NC構造を得る. 令和3年度では①垂直配向転移の再現性の検討,②偏光照射による平行シリンダー構造作製の最適化,③ナノ構造の原子間力顕微鏡(AFM)評価条件の検討,④ZnOナノワイヤ圧電体/ミクロ相分離複合膜の検討をおこなった. ①の配向転移再現性検討では,昨年度までの条件において,平行シリンダーから垂直シリンダーへの転移が十分におこらない現象が発現したため,実験の各工程の条件検討をおこなった.②偏光照射平行シリンダー構造作製の最適化では降温過程での光照射条件検討により,配向度の向上が見られた.③のAFM評価条件検討では,ナノ構造取得が困難という状況が生じたため,①の検討と共に,AFMタッピングモード測定の条件最適化をおこなった.④ではミクロ相分離膜の応用機能展開として新たな機能の可能性が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①垂直配向転移の再現性の検討について.再熱処理後,平行シリンダーのままの状態となるケースが80%程度の割合でおこる状況となった.これは膜表面にBC以外の成分が残存,実験時のコンタミネーションの懸念と,シリコンオイル層が除去しきれない状況の検討おこなった.使用している液晶性BC膜では表面に薄いシリコンオイル層(スピンコート条件膜厚1nm)があるだけでも垂直構造は得られない.またシリコンオイル鎖がBC鎖と1部マージし,絡み合った状況でも配向転移はおこらない.具体的な検討項目は,基板洗浄工程,ポリアミック酸合成とイミド化熱処理,ラビング処理,BC溶液,BC精製,BCスピンコート,予備熱処理,シリコンオイル塗布,熱処理,攪拌熱ヘキサン条件(封止除去),乾燥,再熱処理,その他,溶媒,器具のコンタミ除去である.これらの検討の結果,再現良く垂直シリンダーへの転移を得ることができた. ②偏光照射による平行シリンダー構造作製の最適化では,偏光照射時の降温速度,偏光照射停止温度を検討し,昨年度より配向性の高い(偏光顕微鏡明度評価)構造が得られたと考えられる. ③AFM評価条件の検討では,測定中の探針の汚染と考えられる,撮像時のナノ構造の不鮮明もしくは評価できないという状況が起こった.①での検討と共に,AFMタッピングモード条件の,探針振動周波数と振幅の検討を行った.共振ピークよりも振幅が半減する周波数を選択し,振動振幅を2倍程度にすることにより,撮像が可能になった. ④ZnOナノワイヤ圧電体/ミクロ相分離複合膜の検討では,ミクロ相分離膜をZnOナノワイヤ薄膜に複合することで,圧電体の発電効率の向上と疲労強度の向上という,新しい現象を発見した. 研究コア現象の再現性や測定の再検討をおこない解決でき,またミクロ相分離膜の新たな機能の発現を実証したため,研究は概ね順調に進んでいると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度までに,高配向化法をあわせて巨視的配列垂直NC構造膜を得ており,その再現性とAFM評価も十分可能な状況となっている.但し,試料全面に垂直構造が得られており,偏光UV-visスペクトル測定からも高配向を有する平行配向NC構造からの転移構造であるため,垂直構造も高配列であることが示唆されるものの,直接的な試料全体の六方配列評価には至っていない.令和4年度では,原子間力顕微鏡を用いた,実像多点測定及び,NC周期とAFM分解能を同程度に設定したときに現れるモアレパターン計測により,1画像中100倍程度の面積評価法を実現する.斜入射小角X線散乱測定も行い,cmスケールでの平均構造評価も実施する.また,これまでにラビング法と偏光照射法によりパターン化ナノ構造の作製に成功していることから,同法に対してもGISAXS及びAFM評価を施し,評価能について調査する.また,磁性体への六方配列構造パターン転写:①親水性NCとそれを囲む疎水性の液晶マトリックスの化学的コントラストにより,親水性物質をNCドメインに選択的に導入または表面堆積できる(BCテンプレート法).気相もしくは液相での導入・堆積を試みる.数nmサイズでも強磁性を示すCoPt,FePtへの転写をおこなう.4.巨視的同一配列垂直シリンダーの高密度化:現在用いている液晶性BCでは記録密度は3Tbit/inch2(HDD容量:50TB)と算出される.液晶性BCの重合度(N)を小さくすることにより,ナノ構造サイズ及び間隔を小さくできる.また,新たな応用展開としてZnOナノワイヤと高配列ミクロ相分膜の複合化による出力向上と疲労特性向上の検討を進める.ミクロ相分離構造のZnOへの転写及び,ミクロ相分離膜製膜性向上のための表面プラズマ処理装置,微小電流評価のためにピコアンメータを購入し,研究を加速する.
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体不足の影響で装置の納期が長くなっており,昨年度内での納品ができなかった.以下の装置を購入する. ・春日電機製 表面プラズマ処理装置 ・ケースレー製 6400シリーズ・ピコアンメータ
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