ボトムアップ式のナノ加工法の代表であるブロックコポリマー(BC)が形成するミクロ相分離ナノ構造の応用研究の中で,トップダウン式ナノ加工法によるガイドパターンを用いずに巨視的配列に成功した例はない.本研究では,液晶性BCの液晶性を2段階で利用することにより,巨視的に同一方向に配列した垂直配向ナノシリンダー(NC)配列体を作製し,構造微細化を施すことにより,安価で大量生産性に優れる超高密度の磁気記録媒体の作製へつなげる. 令和4年度では,①液晶相温度での再アニール条件の検討,②画像フーリエ変換像を用いた配向性の定量的評価,③偏向照射とアニール及び再アニール条件のマッチング,④ミクロ相分離の圧電体用絶縁膜としての応用機能展開について研究を遂行した. これまで液晶性BCのアニール条件は液晶等方相の140℃でおこなってきた.液晶メソゲンの運動性が高い状態からの液晶化が,垂直NC構造の形成を誘起する液晶のホメオトロピック配向のキーポイントと考えていたためである.しかし,第一アニールで形成された平行配向のガイドは,分子運動性の高い液晶等方相で揺らぐ可能性があると考え,液晶BCの液晶相の中でも運動性の高いスメクチックA相でのアニールの検討をおこなった(①).その結果,数時間の液晶温度アニールと,短時間の等方相アニールを組みあせた場合に,垂直シリンダーの配列性が26%向上した(②の定量評価法の適用).偏向照射方においても同様の配列性向上が確認された(③).④圧電体ナノワイヤ膜にミクロ相分離膜をコートすることにより,コートのない膜と比べて,大きく電圧出力が向上することがわかった.ミクロ相分離膜が絶縁膜として機能すること,有機物であるミクロ相分離膜が力の圧電膜への伝達を均一にしたと考えられる.全体として垂直配向シリンダー構造の巨視的配列化と,構造規則性の向上を達成することができた.
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