研究課題/領域番号 |
18K05249
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉川 千晶 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (10447930)
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研究分担者 |
榊原 圭太 京都大学, 化学研究所, 助教 (20618649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / 再生医療 / 軟骨組織再生 / 間葉系幹細胞 / 傾斜構造材料 / ポリマーブラシ |
研究実績の概要 |
本研究では関節軟骨再生のための傾斜構造材料創製に向けて研究を進めている。軟骨組織は生理活性・力学特性・高次構造が傾斜しており、これらを模倣することで軟骨組織内の各部位に必要な機能が発現できると考えている。本年度は生理活性・力学特性の傾斜したポリマーを合成すべく、(1)生理活性ペプチドを担持させたモノマー合成、(2)ペプチド含有ポリマーの合成、(3)ポリマー中の生理活性物質の有用性評価について研究を進めた。 まず、Fmoc固相合成によりCD44結合ペプチドを合成し、アクリルアミドモノマーに担持させた。ここではペプチド末端が与える影響について検証するため、N末端またはC末端側にモノマーを導入し、フリー末端の異なる二種類のペプチド担持モノマーを用意した。得られたペプチドモノマー(生理活性)を2-ヒドロキシプロピルアクリルアミド(生体適合性)およびベンゾフェノンアクリルアミド(光反応性)と三元共重合し、光架橋性のポリマーを得た。これをPETフィルム上に塗布し、紫外線照射により固定した。得られたポリマー表面に対し、間葉系幹細胞、モデル肝細胞、マウス繊維芽細胞を用いて接着実験を行った。その結果、C末端フリーなポリマー表面にはいずれの細胞も接着しなかったが、N末端フリーのポリマー表面では、間葉系幹細胞のみが接着・進展することが確認された。共重合体に含まれる生体適合性ポリマーが細胞接着を抑制し,CD44結合ペプチドの特性によりCD44抗原を有する間葉系幹細胞のみを接着・伸展させたと考えられる。また、ペプチド含有量に依存して間葉系幹細胞の接着量が変化することも確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に沿って研究を進め、軟骨分化に有効なペプチド担持モノマーの合成および重合に成功したため、概ね順調と判断した。ペプチド担持モノマーの量を変えることで、ポリマーブラシ層の生理活性を傾斜させることが可能となるため、次年度実施計画をスムーズに実行に移せる。
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今後の研究の推進方策 |
実施計画に従い、ペプチド担持モノマーをポリマーブラシ層に導入し、ペプチド濃度をブラシ層内で傾斜させる。また、グラフト密度や架橋密度を調整することで力学特性の傾斜したブラシ層を構築する。各ブラシ層に対して間葉系幹細胞を播種し、効率よく軟骨分化させるための条件検討を行う。これまでにセルロースナノファイバーへのグラフト重合を行い、間葉系幹細胞と共培養する予備実験を始めており、次年度はこれを本格的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請の前年度に、在外派遣先のオーストラリアCSIROにてペプチド担持モノマーの合成および重合の予備実験を進めていたため、初年度の合成試薬代が当初予定を下回った。また、事故入院のため、予定していた学会に参加できずに旅費をほとんど使用しなかった。このため、平成30年度の合計使用額は大幅に減少することとなった。平成30年度分の繰越金は次年度分と合わせて、合成・バイオ実験に必要な消耗品などの物品費および旅費に充てる。
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