研究課題/領域番号 |
18K05252
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
敷中 一洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00507189)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノチューブ / 刺激応答素材 / ゲル / 液晶 |
研究実績の概要 |
本研究では、IGナノチューブのらせん秩序を元とした液晶素材の開発を目的とする。研究者がこれまでに開発したミリメートルオーダーで欠陥の無い秩序構造を持つIGゲルは既存の液晶素材に比して高速な電場応答を示すと期待される。目的達成に向けた研究として以下を計画する。 ① IGゲルの振とう・ずり以外の外部刺激に対する応答性を評価する ② 円筒キャピラリーで確認されたIGナノチューブらせん秩序を平行平板間で作成する ③ IGナノチューブらせん秩序の液晶素材としての機能 (電場応答性) を評価する。 2018年度までに①②を達成した。2019年度は③に関連して平行平板内におけるIGゲルの電場応答性を評価した。IGナノチューブの作るミリオーダーで欠陥の無いらせん秩序はキャピラリーチューブ内で数μmのコレステリックピッチバンドを示す。よってこれ以下の厚みを持つ平面空間内へのらせん秩序の充填によりねじれ配向が解消し、らせん秩序における自発分極がセルに対して垂直にそろうと期待される。つまり特定の向きにのみ分極のダイレクタがそろう配列が許されるようになり、表面安定化強誘電性液晶としての性質を示すと見込まれる。このような性質を持つ液晶素材は一般に用いられる液晶などに比して高速な電場応答性が期待される。更に本系では基板表面処理を必要とせず流動刺激という単純な処理のみで表面安定化強誘電性液晶が達成できると予想される。次年度ではIGナノチューブを架橋する二塩基酸の構造・ゲルの溶媒・空間サイズを系統的に変化させ電場応答性との相関を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、2019年度以降に目標とした平行平板内におけるIGゲルの電場応答性を評価できた。以上を鑑みるに研究は順調に進展していると言える。次年度ではIGゲルの電場応答性をより系統的に評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はらせん秩序などを有するIG構造体の電場応答性をより系統的に評価する。具体的にはIGナノチューブを架橋する二塩基酸の構造・ゲルの溶媒・ゲルを封止する空間のサイズなどを系統的に変化させ、電場応答性との相関を評価する。 IGの作るミリオーダーで欠陥の無いらせん秩序はコレステリックピッチバンドのサイズ以下(数マイクロメーター)の厚みを持つ空間内へのらせん秩序の充填によりねじれ配向が解消し、自発分極が空間に対して垂直にそろうと期待される。これは、表面安定化強誘電性液晶としての性質を示すと見込まれる。このような性質を持つ液晶素材は一般に用いられる液晶などに比して高速な電場応答性が期待される。更に本系では基板表面処理を必要とせず流動刺激という単純な処理のみで表面安定化強誘電性液晶が達成できるため、液晶の各種性質の制御が比較的容易にできると考えられる。
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