研究課題/領域番号 |
18K05256
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
酒井 平祐 国士舘大学, 理工学部, 准教授 (30580401)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機電界効果トランジスタ / 溶液プロセス |
研究実績の概要 |
前年度の研究目的は、5 V以下の低電圧で駆動する有機電界効果トランジスタ(Organic Field-Effect Transistor, OFET)を作製し、その駆動原理を解明すること並びに、低電圧駆動OFETに応用可能な高分子絶縁材料の材料探索を進めること、の合計2点であった。 前者の駆動原理の解明に関しては、現段階では結論は得られていない。初年度の研究により低電圧で駆動するOFETの作製には成功していたが、前年度から研究代表者の所属変更があり、素子の作製環境が変わってしまうこととなった。その結果、低電圧で駆動するOFETの作製条件の再構築をするための予備実験が必要となり、その実験に多くの時間を費やしたためである。現段階では、以前と同じ材料を用いたOFETでは、同等の性能を発揮するところまでは至ってない。作製プロセスにおける問題点の抽出と改善を現在進めている。 一方で、後者の低電圧駆動OFETに応用可能な高分子絶縁材料の材料探索に関しては、生物由来材料を原料とする高分子の1つをOFETの絶縁層に応用すると、これまで作製したOFETと同等の性能を発揮できるということを見出した。目標とする数値である、サブスレッショルドスロープの値において、約100 mV/decを得ており、他の報告例にある生物由来材料を用いたOFETの中でも低い値となった。加えて、この材料では作製プロセスをこれまで我々が採用していた方法よりも簡易にできることも明らかになった。これらの結果については、現在国際学術誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究代表者の所属変更があり、新たな実験室や素子の作製・評価環境の立ち上げに尽力する必要が生じた。これは、実験環境を0からの立ち上げとなったため、研究環境の再構築に時間がかかり実験の進捗が予定より遅れる結果となった。現在は再現性よく素子特性が得られるような実験条件の確定に注力している。 一方で、低電圧駆動トランジスタ用の新規絶縁材料の探索は前倒しで開始することができた。ポリアミノ酸系の材料を探索した結果、低電圧駆動有機トランジスタの絶縁層として有望な材料を発見し、報告準備段階まで研究が進んだ。 これらの状況を鑑み、進捗状況は上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に異動に伴い素子作製環境を再構築したため、現在の研究環境で作製する低電圧駆動トランジスタの性能が、所属異動前の性能と同等になるような作製条件を確定する。その結果をもとに、引き続き申請書の研究計画に沿って、研究開発を進めていく。特に本年度は、計画した一連のワークパッケージの中で比較的遅れている駆動メカニズムの解明に必要なキャリアトラップの定量的評価について重点的に取り組む。 新規絶縁層材料の探索としては、ポリアミノ酸系の生物由来材料において有望と思われる材料が見つかっている。駆動メカニズムの詳細な検討は進められていないが、材料探索に関する研究計画に沿って最終年度にこの材料についても重点的に実験を実施していく予定である。 これら、キャリアトラップの評価と新規材料の探索を進め、素子の低電圧駆動化に寄与する要因を明らかにすることで駆動メカニズムの解明へとつなげていくことができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、2~3月に国内外の学会への参加を予定しており旅費と参加費として予算を確保していた。しかし、新型コロナウィルス流行の影響により、それらがすべてキャンセルとなってしまった。その結果として余った予算(25万円程度)が、次年度使用額として残っている部分の大半である。 参加を予定していた国際学会は、招待講演による参加であるため、次回の学会での講演が決定している。よって、この学会への参加費・旅費として予算を使うことを計画している。
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