研究課題/領域番号 |
18K05257
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
長尾 祐樹 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (20431520)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 組織構造 / 高プロトン伝導 / 高分子 / 液晶性 / 薄膜 / 分子量 / 脂環式ポリイミド |
研究実績の概要 |
高プロトン伝導性高分子の分野は、ミクロなナノ構造とマクロな物性であるプロトン伝導度の相関を直接議論できていない。この問題の起源は、高分子構造が長 距離秩序を持たないために構造の議論が不十分であることが1つの要因である。これまでに脂環式式スルホン化ポリイミドでは、主鎖の剛直性が芳香族系スルホン化ポリイミドよりも低下するために、組織構造が湿度(RH)変化可能な斜入射小角X線散乱法(GISAXS)でみられておらず、構造とプロトン伝導性の議論が進んでいなかった。研究代表者らは2015年に芳香族系スルホン化ポリイミドにおいて、ポリマーの分子量が組織構造の構造規則性・周期性に影響を与えることを見出している。(J. Phys. Chem. C, 119(38), 21767 - 21774 (2015))この考え方を応用し、脂環式ポリイミドにおいて分子量を向上させる検討を行った。その結果、分子量が向上すると、RH増加と共にラメラ構造が現れ、構造規則性・周期性が向上することがGISAXSの結果から明らかになった。プロトン伝導性も分子量の向上と共に増加し、脂環式スルホン化ポリイミド薄膜において、初めて10-1 S cm-1(298K)オーダーの高プロトン伝導性高分子を得ることができた。この結果は、リオトロピック液晶性による組織構造を得るためには、主鎖は必ずしも剛直である必要はなく、分子量向上によって得ることができることを示すものである。したがって、本年度は、高プロトン伝導性ポリマーを設計する指針として、組織構造を用いる本研究のアイデアは、より一般的な物質系に拡張できる可能性を示した点で意義があったと考えられる。関連する論文発表は9件、学会発表は20件(うち招待・依頼講演は3件)実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
提案のアイデアに基づき、組織構造を用いた高プロトン伝導性の設計方法の開拓において、予想以上の多くの知見が得られており、論文発表も滞りなく進んでいる。この結果を発表した後、国内外からの招待講演の依頼がさらに増えており、研究代表者オリジナルの独創的な研究を加速させることができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画は当初の計画以上に進展しており、次年度の計画も予定通りの計画をもとに進める予定である。これまでの知見をもとに、アモルファス構造では従来議論できなかったプロトン伝導と構造的要因の体系的整理を通して、概念をより一般化できるかどうか検討を行い、新たな分子設計指針の導出と高分子イオニクスの知見を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費、旅費が当初予定していたよりも少なく済んだため。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、予定していた以上に成果が出ていることから、概念をより一般化することを目指すために、対象物質系をスルホン化ポリイミド以外でも検討を行うために、試薬等の購入を予定している。
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