近年、適切な剛直有機配位子と配位方向が規定された金属クラスターの間の錯体形成で得られる周期性の高い結晶性化合物である金属ー有機構造体(Metal-Organic Framework; MOF)が、これまでにない特徴を有する多孔性の自己組織化型材料として注目を集めている。本研究では、MOFの金属錯体の配位結合を、明確な方向性と弱い共有結合に匹敵する強度を合わせもつ水素結合性イオン結合で置き換えて、MOFと同程度に安定な、多孔性で頑強な3次元ネットワーク構造(イオンー有機構造体:Ion-Organic Framework (IOF))をもつ自己組織化型材料を構築することを目指している。 本年度は、アミジンとカルボン酸からなる水素結合性イオン結合で架橋された超分子ポリマーゲルについて、母体ポリマーの構造と架橋パターンの違いが動的粘弾性に及ぼす影響を調査・検討した。今回新たに、アクリル酸とアクリル酸ブチルのランダム共重合体を合成し、主鎖にアミジン基をもつポリアミジン(PAmd)との組み合わせによる超分子ポリマーゲル(A)を合成した。Aの動的粘弾性データについて、以前、合成した両末端にカルボキシ基をもつテレケリックなポリアクリル酸ブチルとPAmdからなる超分子ポリマーゲル(B)、および両末端にカルボキシ基をもつテレケリックなポリブタジエンとPAmdからなる超分子ポリマーゲル(C)との比較を行った。その結果、これらの超分子ポリマーゲルの動的粘弾性は、母体ポリマーの物性のみならず、超分子架橋パターンの影響を強く受けることが明らかになった。
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