研究実績の概要 |
超分子相互作用能を有するπ共役系分子を用いた有機熱電材料の開発を目的として、主に以下の成果を得た。 (1)ジヘキシルクアテルチオフェン(4T)のジヨード体(I24T)と5-エチニルピリミジン(PM)の薗頭カップリングにより、PM基を1つ導入したPMI4Tと2つ導入したPM24Tを合成した。PMI4T分子は4Tの末端の一方にヨウ素、もう一方にPM基を有している。4T、I24T、PMI4T、PM24Tの第1酸化電位は、0.51*、0.52、0.53、0.54 V vs. Fc/Fc+(*は酸化ピーク電位)であった。すなわち、置換基を導入しても電子ドナー性は保たれおり、電気化学的可逆性も向上していることが分かった。CHCl3中で、PMI4Tと(NO)BF4を反応させたところ黄色から黒褐色の溶液に変化し、PMI4Tのラジカルカチオンが発生した。この溶液から空間群P-1の結晶を得たが、この結晶は中性のPMI4T分子の結晶であった。また、PMI4Tをヘキサン、CHCl3-CH3CN混合溶媒から再結晶を行い、それぞれ、空間群Pbca、Pca2(1)の結晶を得た。条件の違いによる結晶多形現象は、PMI4Tの様々な超分子相互作用が拮抗していることを示している。 (2)(RDABCO)I (R = Pr, Hex)とF4TCNQの混合により、(PrDABCO)(F4TCNQ) (1)、(PrDABCO)2(F4TCNQ)3 (2)、(HexDABCO)(F4TCNQ) (3)、(HexDABCO)2(F4TCNQ)3 (4)を得た。錯体2以外は、F4TCNQ分子が1次元積層カラムを形成していたが、錯体2では、イオン的なF4TCNQ分子の2量体とその2量体に直交した中性的なF4TCNQ分子の単量体が2次元シートを形成していた。電気伝導度測定の結果、錯体1、2、3、4は全て絶縁体であった。
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