研究実績の概要 |
金錯体は親金相互作用などの「分子間相互作用」により発光する。従って,分子間相互作用を効果的に発現するように,分子の集合形態(分子の配置と配向)を制御することができれば発光効率を最大化できる。これまでに,結晶や液晶のような「秩序をもった凝集相」において分子間相互作用が効率よく発現し,金錯体が高い発光効率を示すことを明らかにした。また,結晶や液晶の多形を示す金錯体では相転移により分子集合体の秩序構造が変化するため,発光挙動を制御できることも見いだした。 2020年度は,このような金錯体の発光挙動が単結晶サイズにも依存することを見いだした(Commun. Chem., 3, 139 (2020))。一例を挙げると,バルク結晶(> 50 μm)が室温で紫色に発光する錯体を微結晶(< 10 μm)にすることで発光が赤色に変化した(図1C)。種々の検討により,この現象は微結晶を調製する条件や微結晶周辺の環境の影響を受けたものではなく,単に結晶サイズの変化だけで発光挙動が変わることを確認した。単結晶のサイズによって結晶構造が変化し,10 μm以下の微小領域ではバルクスケールの結晶とは全く異なる結晶構造と物性を示すことも明らかにした。 機能分子を材料へと展開する場合,しばしば微粒子や薄膜として利用される。予備検討は微粒子や薄膜などはバルク結晶から期待されるものとは全く異なる物性を示す可能性を示唆しており,機能材料の設計においてはサイズと物性の相関が非常に重要な知見となる。
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