研究課題
当該年度は昨年度に構築した電界励起過渡吸収分光装置の改修と改良を進めた。昨年度に導入した検出光用の集光型キセノンランプが破損したため、新しいランプを発注して改修作業を行った。並行して時間分解発光装置の整備も進めた。オシロスコープによる計測をベースに、リミッターアンプを用いた回路技術を開発することで、オシロスコープによる計測の問題(小さな信号ダイナミックレンジ)を解決し、さらに時間相関単一光子計数法との比較において、過渡発光プロファイルの取得を900倍ほど高速化することに成功した。電界励起過渡吸収分光装置は一通り予定する開発を終え、実際の有機EL素子を計測する段階に到達した。なお、集光型キセノンランプの交換期間に、この間に本課題に関連した有機EL材料の発光メカニズムの研究を光励起過渡吸収分光を用いて行った。その結果、本装置の相補的な手法となる時間分解光電子顕微鏡を用いた有機EL材料の励起電子ダイナミクスやエキサイプレックスの励起子解離過程、さらに室温燐光材料の励起状態ダイナミクスや大気暴露による薄膜の結晶化の解明を行い、それぞれで論文発表の成果を得た。電界誘起二重共鳴SFG分光を用いた研究では、P型有機半導体DPh-BTBTを用いたトランジスタについて、素子駆動時の電荷挙動の直接可視化のため、SFGの局所イメージングを試みた。トランジスタを駆動すると、SFG分光ではスペクトル上の絶縁有機単分子膜由来、有機半導体層界面由来のSFG信号強度がそれぞれ上昇した。この起源を解明するため、局所SFGイメージングによる解析を行ったところ、素子駆動時に電荷蓄積が金電極直下に偏在している様子が明らかとなった。また、金電極直下の金属/有機半導体界面での電荷挙動はソース、ドレイン電極で異なっている様子を鮮明にとらえることができた。本成果についてはPCCPに投稿し、受理された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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