研究課題/領域番号 |
18K05269
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
柳瀬 郁夫 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10334153)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 層状化合物 / セラミックス |
研究実績の概要 |
二酸化マンガン及び炭酸ナトリウムの混合粉末を空気流通下850℃で焼成し、ナトリウムマンガネートNa0.70MnO2.05の単一相を合成した。この合成粉末の二酸化炭素CO2吸収挙動を異なる湿度条件で調査したところ、湿度が高いほどCO2吸収速度が増加することがわかった。これは、水蒸気が粒子表面に吸着した後、層間からナトリウムが吸着水に溶出されることで塩基性液膜が粒子上に生成し、粒子表面でのCO2吸収反応が促進されたためと考えられた。 このようにCO2を吸収すると,Na0.70MnO2.05は含水型層状構造化合物のバーネサイト相と炭酸水素ナトリウムNaHCO3に変化することがわかった。そこで、高温X線回折試験を用いてCO2反応後の粉末を大気中で昇温しながら、各温度での結晶相の温度変化を調査した。その結果、100℃でNa0.70MnO2.05に再生することがわかり、CO2吸収無機固体としては極めて低温で再生できることを見出した。CO2吸収材料には、繰り返し使用できる性質をもつことが望ましい。そこで、CO2反応・再生の繰り返し特性を調査した。反応は,加湿したCO2(濃度20%)を室温で1h、再生は、Ar流通下150℃で5hとした。再生粉末は合成粉末に比べてCO2吸収量が低下したが、再生回数が二回目以降の粉末のCO2吸収量にはほとんど変化はなく、Na0.70MnO2.05が繰り返し使えるCO2吸収材料になり得ることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層状構造をもつナトリウムマンガネートNa0.70MnO2.05を合成し,その低温CO2吸収及び再生特性を調査することを目的とした。合成粉末のCO2吸収挙動を異なる湿度条件で調査したところ、湿度が高いほどCO2吸収速度が増加することがわかった。これは、水蒸気が粒子表面に吸着した後、層間からナトリウムが吸着水に溶出されることで塩基性液膜が粒子上に生成し、粒子表面でのCO2吸収反応が促進される機構を提案した。吸収後、100℃に加熱することでNa0.70MnO2.05に再生することがわかった。この温度は、CO2吸収無機固体としては極めて低温であり、Na0.70MnO2.05が繰り返し使えるCO2吸収材料になることを明らかにした。このように、本研究課題に沿った成果が得られており、順調に研究が進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
上記化合物は、低温再生可能な繰り返し特性を有しているが、その測定は、次第に低下する欠点を有している。そこで、今後の方策として、繰り返し特性の劣化を低減できる、新たな化合物を見出して前年度と同様の調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行している中で、次年度に資金を充填配分することが、効果的であると判断したたため。2019年度は、資金を効率よく活用して、より良い研究成果を上げていく。
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