研究課題/領域番号 |
18K05272
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大石 修治 信州大学, 工学部, 特任教授 (50021027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フラックス法 / 単結晶 / スクリーニング / 結晶成長 / データサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究では,フラックス結晶育成技術を体系化し,若手研究者にそれを継承すべく,以下4つのアプローチに傾注する。さらに,現在離散するフラックスサイエンスの体系化への足掛かりを得る(端緒に立つ)ことを目標とする。 4つのアプローチ:①フラックススクリーニング(FS)法による結晶育成プロセスの新提案,②FS法による酸化物結晶育成,③FS法による非酸化物結晶の育成,④フラックスクリスタルマップの作成と継承の仕組みづくり 本研究の初年度にあたる2018年度の研究では,上述の①ならびに②に着手した。特に,①では多元セルの活用を検討し,②ではスーパーフラックスからの結晶育成を試みた。 具体的には,①の取り組みとして,熱分析システム(DTA-TG)を用いて,単セルによる酸化物系結晶(ターゲット:リチウムイオン二次電池(LIB)用,バイオマテリアル用,放熱フィラー用)の育成を試みた。このシステムでの結晶育成から,実育成における初期温度プロファイルの決定を可能にした。さらに②の取り組みとしては,①のターゲットと同様の結晶種を低温フラックスから育成した。例えば,生体硬組織として知られる水酸アパタイト(リン酸カルシウムの一種)を複合硝酸塩フラックスからさまざまな条件で育成し,各種フラックス結晶育成パラメータに係るデータを収集した。また,同様のフラックス結晶育成の取り組みをLIB用正極活物質の層状三元系酸化物と負極活物質のスピネル系酸化物でも実施し,各種データを収集した。加えて,低温化は実現できなかったが,融点の約半分の温度(1100℃程度)にて,放熱フィラー用のAl2O3(あるいはAl2O3:Cr)結晶のフラックス育成データを多数取得した。翌年度の研究に繋げるために,非酸化物放熱フィラーのBN結晶のフラックス育成も検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱分析システム(DTA-TG)を用いて,各種ターゲット結晶種の育成条件(育成プロファイル)の初期設定化を実現できた。これにより,フラックス結晶育成の高効率化を可能にした。さらに,これを用いた実育成実験から得た各種データを次年度以降のフラックスクリスタルマップ作成の元データとして活用できる可能性を見いだした。 フラックス育成の基礎データを多数取得でき,計算科学との極めて密な連携体制も構築できた。いずれも,フラックスサイエンスの体系化に欠かすことができない研究成果である。さらに,翌年度の研究に繋げるための非酸化物結晶育成も開始できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間の最終目標は,フラックスサイエンスの体系化の端緒に立つことであり,フラックスクリスタルマップの作成である。そこで次年度以降は,今回育成した酸化物結晶に関し,計算科学-実験系のフラックス状態図実証を試み,体系化の歩みを進める。特に,状態図の研究に不可避なデータ収集と詳細な解析にも注力する。 また,スーパーフラックスや雰囲気制御育成など,様々な視点から俯瞰したフラックス法を試み,特長的な非酸化物結晶を育成し,酸化物結晶育成と同様の取り組みを推進する(2018年度の成果を最大限に活用する)。 なお,フラックススクリーニングに関しては,小型セルの場合,得られる情報が限定されるため,通常サイズ(あるいは若干の小型化)でスクリーニングする方法も深慮する。計算科学においては機械学習やAIの導入の可能性も検討し,最終目標達成を目指す。
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