研究課題/領域番号 |
18K05275
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
辻 悦司 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80610443)
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研究分担者 |
菅沼 学史 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (90731753)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多元系遷移金属酸化物 / 超微粒子 / 逆ミセル法 |
研究実績の概要 |
昨年度までに得られた知見をもとに、新たに酸素発生触媒として知られているスピネル型NiCo2O4の超微粒子化を検討した。2 nm程度の逆ミセル内でスピネル型NiCo2O4前駆体を合成し、これを両性酸化物である酸化亜鉛に担持した。その後、大気中で焼成したところ、酸化亜鉛上に数 nmのスピネル型NiCo2O4超微粒子が得られた。これを濃アルカリ水溶液中で加熱撹拌を行った結果、両性酸化物である酸化亜鉛担体のみが溶解しスピネル型構造を維持した数nmのNiCo2O4超微粒子を単離することに成功した。またTEM-EDSによる化学組成分析により、Ni:Co = 1:2と目的組成で合成されていることがわかった。 こうして得られたスピネル型NiCo2O4超微粒子の光学物性を評価した。バルク状NiCo2O4が近赤外~紫外領域の光を吸収するのに対し、数nmのスピネル型NiCo2O4超微粒子は吸収端が短波長シフトし、600 nm以下の可視~紫外領域を吸収した。このようにバルクとは異なる可視光領域での光吸収が見られた。 次に表面積の異なる酸化亜鉛担体を合成し、これらを用いてスピネル型NiCo2O4超微粒子を合成した。酸化亜鉛担体の表面積が大きいほどNiCo2O4超微粒子の粒子径が減少し、担体の表面積を制御することで、結晶構造や化学組成を変化することなくNiCo2O4超微粒子の粒子径のみが変化することがわかった。また粒子径の減少に伴い、吸収光の波長が短波長シフトすることも見出した。 このように合成したスピネル型NiCo2O4超微粒子の酸素発生触媒活性を評価した。液相ゲル化法で合成した数十nmのスピネル型NiCo2O4微粒子よりも優れた触媒活性を示し、超微粒子化による高活性化を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた酸素発生触媒であるブラウンミラーライト型Ca2FeCoO5が担体溶解時に変性してしまうため、新たにスピネル型NiCo2O4での実施を試みた。その結果、酸化亜鉛を担体として用いることで数nmのスピネル型NiCo2O4超微粒子の単離を達成した。またバルクでは見られない光物性を示すことを見出し、酸素発生触媒活性も向上した。ブラウンミラーライト型構造のみならずスピネル型構造でも本手法による超微粒子化が可能となったため、ペロブスカイト型などの他の構造への展開も期待される。
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今後の研究の推進方策 |
スピネル型NiCo2O4超微粒子において、バンド構造などの電子状態を解析し、バルクとの差異を明らかにすると共に、可視光応答型光触媒としての応用を検討する。また、可視光応答型光触媒として知られるWO3をアノード酸化法によりポーラス化し、この細孔内へNiCo2O4超微粒子担持を行うことで、複合型の可視光応答光触媒の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初の予定に比べ物品使用額が軽減され、また新型コロナウイルスの影響で学会が中止になり旅費が軽減され予算に余裕が生まれた。 (使用計画) 令和2年度分と合算して、今後必要となる装置使用料や物品、旅費などへと使用する。
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