研究課題
Feなどの遷移金属を含む酸化物は、それら遷移金属イオンの酸化還元反応により可逆的な酸素の吸収放出特性を示すため、酸素貯蔵物質や触媒材料としての可能性を秘めており、特に、ペロブスカイト型酸化物(ABO3)において、置換元素の種類や量の最適化により新たな機能性材料の創出が期待できる。令和2年度は、前年度までに合成した試料の中で幅広い組成範囲で単相試料の合成が可能であることが判明したSrFe1-xMnxO3-δ(SFM系)について、軟X線吸収分光測定によるBサイトイオンのL端の局所的な電子状態と原子構造の評価を行った。また、Aサイトのみが異なる試料を用いて、酸素放出挙動に対するAサイトイオンの影響を、熱重量測定とin situ XAFS測定により調査した。SFM系のMn及びFeのK端のXAFSスペクトルより,各金属イオンの価数(局所的な電子状態)は組成比に依存しないことが示唆されていた。しかし,K吸収端はイオン周りの結合状態(局所的な原子構造)にも敏感であり,組成の違いによるスペクトル変化を電子状態と原子構造とに分けて評価することは困難であった。そこで内殻電子由来のため原子構造変化の影響が小さいL吸収端スペクトルを評価した結果,Mn及びFeのLIIIとLII端スペクトルは,FeとMnの混合量に依存せずほぼ変化しなかったため,SFM系のBサイトイオンの価数は組成比に依らず一定であることが判明した。また、Aサイトの化学組成のみが異なるSrFe0.9In0.1O3-δとBaFe0.9In0.1O3-δについて、熱重量測定、in situ XAFS測定を実施した。その結果、Ae元素の電気陰性度やイオン半径といったパラメータの違いが結晶構造の安定性やFeの電子状態を決定する要因になることが示され、酸化還元反応に直接は関与しないAサイトイオンも、酸素吸収放出特性に影響を与えることがわかった。
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Materials Research Bulletin
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