研究課題/領域番号 |
18K05277
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
米田 宏 佐賀大学, 理工学部, 助教 (50622239)
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研究分担者 |
山田 泰教 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20359946)
鯉川 雅之 佐賀大学, 理工学部, 教授 (90221952)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / スピン転移 / 光照射 / 徐放 |
研究実績の概要 |
多孔性材料を利用した分子吸着において、吸脱着挙動や選択性を自在に制御することは大きな目的である。 本研究では、これらの制御に骨格の電子状態の差異を利用し、さらに外部刺激により能動的に制御することを目的としている。そのため多孔性金属錯体に注目し、ホスト骨格に磁気的双安定性を示す金属イオンを組み込み、磁気特性と細孔機能が連動した動的で柔軟な骨格形成を試みた。
これまで多孔性配位高分子に外場応答部位としてのスピン転移サイトを組み込んだ Fe(pz)[M(CN)4] (M = Pt(1), Ni(2)) に二硫化炭素 (CS2)、及びアクリロニトリル (C2H3CN) を吸着させると骨格の収縮が誘起され、鉄イオンのスピン状態が低スピン (LS) で安定化されることを見出した。これら4種類のゲスト包接体を用いて室温で光照射によるゲスト分子の徐放を試みた所、1・CS2 でのみ 高スピン (HS) 相への転移と包接された CS2 分子の約 60% が放出された。熱特性の測定より、包接されたゲスト分子の安定性と包接体のスピン転移挙動に応じて、ゲスト分子が放出されることが示唆された。 また更なるゲスト分子とホスト骨格の組み合わせに関しても検討した。2 のニトロメタン包接体が適度な磁気特性を示し、光照射による骨格のスピン転移にも成功したが、ゲスト分子はほとんど放出されなかった。現在ホスト-ゲスト相互作用の詳細な評価を進め、放出機能の解明とゲスト分子放出量の増加に関して試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲスト包接体の光照射によるオンデマンドな放出制御に成功した。しかし、特定のゲスト包接体のみであり、また放出量は60%にとどまっている。放出機構の解明を進め分子設計を最適化しつつ、ゲスト分子のオンデマンドな徐放の評価を推進する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後はゲスト包接体の光照射による相転移機構を詳細に解明するとともに分子設計を最適化しつつ、ゲスト分子のオンデマンドな徐放の評価を推進する。加えて、様々なゲスト分子の光照射による放出制御を試みる。 また、光照射により徐放に成功した CS2 分子を反応基質として用いることを検討する。塩基性溶液中で放出された CS2 とアルコール、並びにアミンとの反応を検討し、系中の基質濃度を制御することで反応性のスイッチングを達成する。加えて、PCP の内部空孔に、補因子として活性剤や阻害剤を導入し、スピン状態に応じた反応中間体の安定化・不安定により、反応に対する寄与を変化させ、能動的な反応制御の達成と、新規な反応機構の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の積極的な発信と言う点で不十分であり、成果発表、及び物性評価として計上した予算の繰越が生じた。成果を受け、光照射の条件をより最適化する必要がある。
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