本研究課題では、固体酸化物燃料電池(SOFC)などの酸化物イオニクスデバイスにおける電極/電解質界面のイオン移動に焦点を当て、その抵抗の支配因子解明を目指した。そこで、酸素空孔型、過剰型の電極/電解質界面を有するさまざまなセルの構築と抵抗測定を実施した。 ペロブスカイト型電極/アパタイト型電解質界面においては、界面反応層の形成が問題となった。スクリーン印刷法ならびにパルスレーザー蒸着(PLD)法で電極形成を行ったところ、PLD法を用いることで低い分極抵抗が得られた。放射光マイクロビームを用いた微小分析を実施したところ、スクリーン印刷法を用いた場合、界面部に副反応による絶縁層が形成され、これが固/固界面イオン移動を阻害し、高抵抗の要因となっていることが明らかとなった。このように界面反応層の形成が支配的となる界面において、その微量析出層を効果的に検出する手法が確立できた。 次に、PLD法で構築した緻密電極/電解質界面を含む対称セル、ならびに3電極セルを構築して交流インピーダンス計測を行い、電極反応素過程における抵抗の分離評価を目指した。La2NiO4系電極/CeO2系電解質による緻密電極/電解質界面を作製し、このセルについて温度を変えながらインピーダンス測定と解析を実施したところ、インピーダンスプロットでは電解質の粒内、粒界抵抗、界面イオン移動抵抗、電極内のイオン拡散抵抗、ならびに電荷移動抵抗の直列回路に対応する応答が見られた。しかし界面イオン移動抵抗については、他の抵抗成分と時定数が近いことから、抵抗ならびにCPE素子から成るフィッティング手法では抵抗の分離が困難であった。そこで、伝送線モデルを適用することで良好なナイキストプロットのフィッティングが行え、分離評価が可能となった。以上より、界面イオン移動抵抗を正確に評価できる手法を確立できた。
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