最終年度として、高活性なプラズモニック光触媒のための担体の効果を検討した。プラズモニック金属から担体に移動したキャリアの再結合による失活を抑制するためには、高い電荷分離効率の達成が重要となる。酸化チタンナノ粒子からヘテロエピタキシャル成長させた酸化スズナノロッドは、原子レベルで整合した良質な界面を持つことに加え、酸化スズナノロッド中に生じた格子の歪みにより、ロッドの根元から先端に向けて伝導帯下端の曲がりが形成されることを見出した。これにより、光照射によって生じたチャージキャリアの長距離電荷分離が達成された結果、高い光触媒活性を示すことを明らかにしている。また、この担体を適切な温度で熱処理することで、ヘテロエピタキシャル成長に由来したロッド間の融合・高結晶化が誘起されるため、キャリアの移動がスムーズになった結果、高い光触媒活性を示すことを明らかにした。 3年間の研究総括として、(1) 金ナノ粒子担持p型半導体である酸化ニッケルにおいて、赤色光照射により金ナノ粒子から酸化ニッケルへのホットホール注入が生じる。(2) 金と銀の合金ナノ粒子が、金と銀それぞれのナノ粒子よりも高い局所電場増強効果を持つ。(3) 銅アセチルアセトナートが触媒表面で酸素分子を挟んだ2核錯体を形成し、これにより選択的な酸素2電子還元反応が進行することで、高活性な過酸化水素合成が行える。(4) ヘテロエピタキシャル接合を有する異種半導体複合担体が、長距離電荷分離を可能にする。ことを明らかにした。これにより、太陽光をエネルギー源として過酸化水素を製造する「ソーラー過酸化水素合成」の達成への道が開けたものと考える。
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