研究実績の概要 |
本研究では、金属イオンをドープした高分子フィルムを金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks: MOFs)結晶膜を作製する前駆体かつ支持基板として利用し、MOFsの核形成ならびに核成長の速度を制御することによりMOF連続膜を形成する手法の開発を目的としている。 令和元年度では、主に3つの課題、1)カルボン酸系リガンドを用いたMOFsの結晶核形成・核成長速度の制御、2)アミン系リガンドを用いたMOFsの結晶核形成・核成長速度の制御、3)金-チオラート配位高分子の形成について検討した。 1)の課題について核形成と核成長速度によってフィルム上に形成するMOF結晶のサイズや密度が大きく変化することがわかった(Langmuir 2019, 35, 10390-10396)。 2)の課題についてはカルボン酸系リガンドとは異なりアミン系リガンド添加のみではフィルムにドープした金属イオンの溶出を誘起できないため、新たに添加としてNaイオンを加え、その量を変化させることで核形成・核成長速度を制御することに成功した。またそれらを調節することにより、得られるMOF膜の形態(結晶サイズやフィルムの連続性)を制御可能であることが分かった(CrystEngComm 2019, 21, 4851-4854)。 3)の課題についてはこれまで検討してきたMOFとは異なり細孔がないAu-チオラート配位高分子の形成について検討することにより、本手法の汎用性について評価した。その結果、Au-チオラート配位高分子の形成に成功し、形成過程においてアモルファスから結晶への相転移が生じていることを明らかにした(Cryst. Growth Des. 2020, 20, 1961-1968)。
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