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2019 年度 実施状況報告書

核形成・核成長反応制御に基づく金属イオンドープ高分子上でのMOF連続膜形成

研究課題

研究課題/領域番号 18K05281
研究機関甲南大学

研究代表者

鶴岡 孝章  甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (20550239)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード金属有機構造体 / 配位高分子 / 薄膜 / 自己組織化
研究実績の概要

本研究では、金属イオンをドープした高分子フィルムを金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks: MOFs)結晶膜を作製する前駆体かつ支持基板として利用し、MOFsの核形成ならびに核成長の速度を制御することによりMOF連続膜を形成する手法の開発を目的としている。
令和元年度では、主に3つの課題、1)カルボン酸系リガンドを用いたMOFsの結晶核形成・核成長速度の制御、2)アミン系リガンドを用いたMOFsの結晶核形成・核成長速度の制御、3)金-チオラート配位高分子の形成について検討した。
1)の課題について核形成と核成長速度によってフィルム上に形成するMOF結晶のサイズや密度が大きく変化することがわかった(Langmuir 2019, 35, 10390-10396)。
2)の課題についてはカルボン酸系リガンドとは異なりアミン系リガンド添加のみではフィルムにドープした金属イオンの溶出を誘起できないため、新たに添加としてNaイオンを加え、その量を変化させることで核形成・核成長速度を制御することに成功した。またそれらを調節することにより、得られるMOF膜の形態(結晶サイズやフィルムの連続性)を制御可能であることが分かった(CrystEngComm 2019, 21, 4851-4854)。
3)の課題についてはこれまで検討してきたMOFとは異なり細孔がないAu-チオラート配位高分子の形成について検討することにより、本手法の汎用性について評価した。その結果、Au-チオラート配位高分子の形成に成功し、形成過程においてアモルファスから結晶への相転移が生じていることを明らかにした(Cryst. Growth Des. 2020, 20, 1961-1968)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題は、MOF結晶の核形成と核成長速度を任意に制御し、MOF連続膜を形成する手法を開発することを目的としている。現在のところ、核形成と核成長速度を有機リガンド濃度や添加剤濃度によって制御することに成功しており、それらの速度が得られるMOF膜の形態に大きく影響することを明らかにしている。また適切な条件下にて反応を行うことによりMOF連続膜の形成にも成功した。
さらに当初の計画には加えていなかったが、細孔を有していない配位高分子についても検討を行うことで汎用性を評価した。その結果、金とチオールといった非常に配位速度が速い系においては反応初期段階にてアモルファスが形成し、その後結晶へと相転移するという新たな過程を観測することにも成功している。
以上より、当初の計画通り順調に進展していること、新たな知見を得ることにも成功していることから、「おおむね順調に進展している」とした。

今後の研究の推進方策

最終年度の課題としてプロセスの汎用化を挙げている。既に手法は様々なMOFに適用可能であることを明らかにしてきている。MOF膜の機能制御を考慮した場合、構造変化をする柔軟なMOFについて検討することは非常に有用な課題である。そのため柔軟MOFに対して本手法を適用することで、柔軟なMOF膜の形成および得られたMOF膜の機能評価を遂行していく予定である。
また、Au-チオール配位高分子の作製に成功したことから、他のチオール配位子を用いた配位高分子についても、形成過程を詳細に検討することで提案手法の汎用性を評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の影響により日本化学会の現地開催が中止となったため、一部計上していた執行が未執行となった。これらの助成金については、次年度においては細孔のない配位高分子も新たにターゲットとして課題遂行を行うため、そちらの試薬費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] IRCELYON/Universite Claude Bernard Lyon 1(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      IRCELYON/Universite Claude Bernard Lyon 1
  • [雑誌論文] Coordination-Driven Self-Assembly on Polymer Surface for Efficient Synthesis of [Au(SPh)]n Coordination Polymer-Based Films2020

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Tsuruoka, Takashi Ohhashi, Jumpei Watanabe, Rikuto Yamada, Shoya Hirao, Yohei Takashima, Aude Demessence, Shefali Vaidya, Oleksandra Veselska, Alexandra Fateeva, K. Akamatsu
    • 雑誌名

      Cryst. Growth Des.

      巻: 20 ページ: 1961-1968

    • DOI

      10.1021/acs.cgd.9b01622

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Formation of Metal-Organic Frameworks on Metal Ion-Doped Polymer Substrate: In-Depth Time-Course Analysis using Scanning Electron Microscopy2019

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Tsuruoka, Manami Hata, Shoya Hirao, Takashi Ohhashi, Yohei Takashima, Kensuke Akamatsu
    • 雑誌名

      Langmuir

      巻: 35 ページ: 10390-10396

    • DOI

      10.1021/acs.langmuir.9b01676

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Control of the nucleation and growth processes of metal-organic frameworks using a metal ion-doped polymer substrate for the construction of continuous films2019

    • 著者名/発表者名
      Takashi Ohhashi, Takaaki Tsuruoka, Yohei Takashima, Kensuke Akamatsu
    • 雑誌名

      CrystEngComm

      巻: 21 ページ: 4851-4854

    • DOI

      10.1039/C9CE01054H

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 固液界面での選択的MOF形成2019

    • 著者名/発表者名
      鶴岡孝章、平尾翔也、髙嶋洋平、赤松謙祐
    • 雑誌名

      日本接着学会誌

      巻: 55 ページ: 301-307

    • DOI

      10.1021/acs.cgd.9b01622

  • [学会発表] 金属イオンドープ高分子基板上での相互貫入型金属有機構造体の直接合成2020

    • 著者名/発表者名
      平尾翔也、髙嶋洋平、赤松謙祐、鶴岡孝章
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会
  • [学会発表] Control of nucleation and growth process of MOFs using metal ion-doped polymer substrate for constructing the continuous MOF films2019

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Tsuruoka
    • 学会等名
      International Conference on Advanced Structural and Functional Materials
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 高分子フィルム上での相互貫入型金属有機構造体の構造転移挙動評価2019

    • 著者名/発表者名
      平尾翔也、髙嶋洋平、赤松謙祐、鶴岡孝章
    • 学会等名
      錯体化学会第69回討論会
  • [学会発表] Characterization for Structural Transformation Behavior of Interpenetrated Metal-Organic Frameworks Formed on a Polymer Substrate2019

    • 著者名/発表者名
      Shoya Hirao, Yohei Takashima, Kensuke Akamatsu, Takaaki Tsuruoka
    • 学会等名
      OKINAWA COLLOIDS 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] 銅イオン及び4-メルカプト安息香酸からなる配位高分子薄膜の構造制御2019

    • 著者名/発表者名
      宮下友里、髙嶋洋平、赤松謙祐、鶴岡孝章
    • 学会等名
      第21回関西表面技術フォーラム
  • [学会発表] 金属イオンドープポリマー上に形成した相互貫入型金属有機構造体の構造転移挙動評価2019

    • 著者名/発表者名
      平尾翔也、髙嶋洋平、赤松謙祐、鶴岡孝章
    • 学会等名
      第21回関西表面技術フォーラム
  • [図書] PCP/MOFおよび各種多孔質材料の 作り方,使い方,評価解析2019

    • 著者名/発表者名
      大橋卓史、髙嶋洋平、赤松謙祐、鶴岡孝章
    • 総ページ数
      639
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-769-5
  • [備考] 甲南大学フロンティアサイエンス学部・ナノ材料科学研究室

    • URL

      http://www.konan-u.ac.jp/hp/FIRST_nanomaterials/

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公開日: 2021-01-27  

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