• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

結晶成長履歴から読み解くリン酸カルシウム塩のモルフォロジー相転移機構

研究課題

研究課題/領域番号 18K05282
研究機関富山高等専門学校

研究代表者

豊嶋 剛司  富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60447076)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード結晶成長 / リン酸カルシウム / モルフォロジー
研究実績の概要

リン酸カルシウム2水和物(DCPD)は、骨の修復と再生用途に用いられるリン酸カルシウムセメントに混和するための生体材料や、土壌や排水中に含まれるフッ化物イオンと選択的に反応してフッ素アパタイト化することで固定が可能な環境材料として注目されている。使用環境に応じて求められる物理的・化学的性質が異なることから、モルフォロジー制御技術の確立が求められている。本研究は特定の結晶方位へ選択成長するために必要な環境を精密に制御する合成法として新たにミスト噴霧合成法を開発し、粒子形状制御に必要な基礎的知見を得ることを目標に定めて、以下の成果が得られた。
カルシウムイオン溶液とリン酸イオン溶液の混和によるDPCDの液相合成を試みたところ、リン酸イオンの添加速度抑制には粒子形状変化をもたらす効果は顕著には見出されなかったが、陽イオンであるカルシウムイオンの添加速度抑制においては負に帯電した結晶面が優先的に成長し、針状にモルフォロジーが変化することが明らかとなった。使用する溶液の初期pHを変化させると針状粒子が優先的に成長する領域も連動して変化することが逐次回収した固相試料の走査電子顕微鏡観察結果より明らかとなった。
通常用いられる液相合成法では平板状粒子と、平板状粒子が凝集した花弁状粒子が優先的に得られるが、本合成法では初期成長過程において針状粒子が得られた後、平板状粒子に形状変化し、最終的には凝集構造である花弁状粒子へと変化していく。一方で、平板状粒子が凝集する過程において、ある程度結晶方位が揃った積層凝集構造を経てから、ランダムな方位を向いた花弁状凝集構造に変化する成長履歴が新たに観察された。以上より針状粒子は成長初期過程で、肉厚状粒子はモルフォロジー変化の境界の限られた成長環境において、それぞれ優先的に成長することが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ミスト噴霧により原料溶液の供給速度を抑制した本方法において、昨年度はミスト噴霧出口において結露した液滴が反応容器内に滴下することで合成条件の再現性に課題が見出された。しかし実験システムの配置を改善することで結露の影響を除外することに成功し、実験再現性の課題が解決されただけではなく、昨年度では見られなかった針状粒子と花弁状粒子の成長過程の間に積層凝集成長過程が存在することが明らかとなったため、本方法による結晶成長履歴の追跡が有効であることが改めて確認された。透過型電子顕微鏡による結晶成長方位の直接観察は試料が電子線に弱いことから観察が困難であったが、撮影条件を調整することで回折像が得られ、成長方位の分析が可能となった。

今後の研究の推進方策

針状粒子が得られる成長機構は、先行研究の報告で提案されているクエン酸共存下でのDCPD粒子の異方的溶解挙動とは逆に、結晶成長の段階で陽イオンが対象の結晶表面に引き寄せられ、濃度が上昇していると推測している。得られた針状粒子に対し、透過型電子顕微鏡を用いて成長方位を確認したところ、その仮説を支持する結果が得られた。しかしながら試料前処理として超音波分散を実施しており、その影響を除外するために収束イオンビーム加工機を用いて針状粒子より試料片の切り出し加工と観察により検証を行う予定である。また同様に積層凝集構造の粒子の破断面観察を行うことで、粒界が通常の花弁状粒子と比べて差異が見出されるのか、微細構造観察を行う予定である。
結晶合成過程においては、再現性が向上したため、異なるpHや濃度溶液を用いて、針状や積層凝集構造が選択的に得られる条件をより精密測定に取り組む予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] ミスト混合法によるリン酸水素カルシウム二水和物の晶癖変化履歴の追跡2020

    • 著者名/発表者名
      豊嶋剛司、矢島樹、高松さおり、袋布昌幹
    • 学会等名
      日本セラミックス協会 2020年年会
  • [学会発表] Anisotropic crystal growth of dicalcium phosphate dihydrate by chemical micro-mist synthesis2019

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Toshima, Daisuke Yamashita, Saori Takamatsu, Masamoto Tafu
    • 学会等名
      4th International Conference on Innovations in Biomaterials, Biomanufacturing and Biotechnologies (Bio-4)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi