研究課題
熱重量天秤とクーロン滴定セルを併用することで、次世代リチウムイオン電池正極として期待されているLi過剰系正極材料Li1.2Ni0.13Co0.13Mn0.54O2の酸素脱離現象を実験的に評価することに成功した。また、X線吸収分光測定によって特異的な電荷補償を起こすことを明らかにした。酸素脱離初期では主にNiの還元が起こり、さらに酸素脱離を進めるとCoの還元によりの電荷のバランスが保障されることを明らかにした。さらにX線回折よって酸素脱離が結晶構造変化を引き起こすことを明らかにした。これらはリチウムイオン電池正極の酸素脱離現象を理解する上で重要な知見である。またLi1.2Ni0.13Co0.13Mn0.54O2のPristineサンプルと酸素脱離サンプルの電気化学特性を比較することで、酸素空孔導入による電池特性の変調を評価した。本研究ではクーロン滴定セルを利用してサンプルに酸素空孔を導入した。これは既往研究とは一線を画するアプローチであり、本研究で準備した酸素脱離試料は1) 酸素空孔量が厳密に制御されており、2) 導入した酸素空孔が材料全体に均質に分散されている点に特徴がある。この二つの独自アプローチによって、これまで解明されてこなかった酸素空孔導入による電池特性変化の本質に迫ることができる。Li1.2Ni0.13Co0.13Mn0.54O2に酸素空孔を導入すると、初期特性は若干低下するが、容量維持率が大きく向上する様子が確認できた。100回充放電後の容量維持率はPristineサンプルが78%であるのに対し、3%酸素脱離サンプルでは95%であった。以上の本研究の実績はアニオン欠陥制御の有用性を示す成果である。
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ACS Applied Materials & Interfaces
巻: 11 ページ: 19968~19976
10.1021/acsami.9b03053