研究課題/領域番号 |
18K05291
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松澤 幸一 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80500743)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 固体高分子形燃料電池 / 空気極 / 担体 / 酸化物系触媒 / 酸化チタン / 脱炭素 / 脱白金 |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池(PEFC)は家庭用定置電源や燃料電池自動車に用いられているが、今後の自動車用の作動条件(高温、高電圧化)を見据えた場合、空気極担体のカーボンは耐久面で問題があり、脱炭素で高耐久な担体の開発が望まれる。これまで安価、資源量豊富かつ高い化学的安定性を持つ4及び5族金属酸化物、特にマグネリ相を有するTi4O7などの導電酸化物を検討してきたが、触媒の性能を維持しながら高電導、高比表面積、高耐久な担体を開発するには課題があった。そこでマグネリ相に至る前段階でのNbドープTiO2での物性の制御因子について検討を行った。具体的には結晶相と導電率との関係を解明するための基礎検討として、Nbドープ有無によるTiO2粉末の作成条件と還元熱処理の影響を評価した。また還元熱処理前の合成法による影響も検討した。更に、触媒に白金を用いる場合、担体それ自体の電子伝導性が低くとも、高比表面積、高耐久な担体が作成できれば電極触媒として適応が可能なため、その条件についても併せて検討を行った。 水熱合成法で作成した方が高濃度ゾルゲル法で作成した試料より比表面積は大きくなった。また、水熱合成法作成した試料は導電率、比表面積に関して相転移との相関関係が確認された。Nbドープをすることにより、導電率、比表面積共に向上し、ドープ量は導電率に特に影響を与えることが確認でき、ドープにより相転移を抑制する効果が得られた。特に、500℃、Nbドープ量:10 at%以上ではNbドープにより導電率を向上させることができた。また、550, 600℃、Nbドープ量:10 at%以上では比較的高い電子伝導性を保ちつつ、ドープにより比表面積を向上させることができた。また、電気化学プロトコルを用いて材料安性で評価すると、その低下率は15000サイクルで2.8%にとどまり、良好な電気化学安定性を示すことも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は年間のメインターゲットを「脱炭素担体の作成」として、期間ごとに(1)TiO2ナノ粒子の最適条件と電気化学安定性評価 (電位窓測定)、(2)還元条件(温度/雰囲気/再熱処理)の最適化を検討に合わせて、疑似電気化学表面積評価(電気二重層容量測定)と被膜抵抗評価 (電気化学インピーダンス測定)を行う流れで研究計画を立てたが、最適条件の検討に注力する部分が多かったものの、Ti4O7の前駆体としてのTiO2系材料そのものでも担体としての特性を示すとともに、結晶相と導電性並びに比表面積との関係を系統的に明らかにするとともに、電気化学安定性評価に加えて、化学的安定も評価しており、高温になるほどTiO2系材料の溶解度が抑制される実験結果も得られており、Ti4O7を作製するというフェーズには至っていないものの、脱炭素担体の作成という意味では良好な進捗を示している。また、電気化学比表面積に加えて、BET比表面積測定や粉末直流抵抗測定により、上記のように結晶相と各種パラメータとの相関も明らかにすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実績を基にTi4O7担体の作製し、その上で当初の提案通り、2年間のメインターゲットを「脱白金・脱炭素の燃料電池空気極の評価」とする。具体的には第1フェーズとして、試料の表面の酸-塩基特性評価(電荷ゼロ点測定)や触媒材料の疑似電気化学表面積評価(電気二重層容量測定)を行い、その後に第2フェーズとして脱白金・脱炭素触媒作製条件 (触媒担持法/担持量/表面修飾)の最適化や触媒性能評価(静止電極及び回転電極を用いた酸素還元反応測定)及び律速段階評価(回転電極を用いた電気化学測定)を行い、最終的には触媒安定性評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で必要な試薬を保管する試薬庫や収納庫、水素や窒素やアルゴンなどの各種試料作製及び分析用のガス、実験室でのデータ収集のための各種ケーブル、化学的安定性評価のための機器など。
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