今年度は、ヨウ化水素(HI)水溶液からの水素生成反応に高い活性を示す半導体光触媒の開発を中心に検討した。光触媒材料については、高い結晶性と比表面積を有し、光触媒としても高いポテンシャルを有する酸化物ナノシートのTiO2ナノシート(TiO2-NS)を用い、遷移金属化合物の担持による可視光下での活性向上効果を検討した。様々な遷移金属種をTiO2-NSに担持したところ、Co > Fe > Mn > Niの順に高い活性を示したことから、Co種担持TiO2-NSを中心に研究を進めた。XPS、FT-IR、SEM-EDXより、Co種はα-Co(OH)2であり、TiO2-NSに高分散に担持されていることが示唆された。UV-Vis拡散反射スペクトルからは、600および400 nm付近に新たな吸収帯が発現し、600 nm付近の吸収はα-Co(OH)2のCo2+のd-d遷移に、400 nm付近の光吸収はTiO2-NSの表面のα-Co(OH)2からTiO2-NSの伝導帯への遷移に由来すると推測された。光触媒活性をAgNO3水溶液からの酸素生成反応で評価したところ、最適担持量は1 wt%であった。また、光触媒活性の波長依存性を検討したところ、α-Co(OH)2で修飾することでTiO2-NSは可視光応答性を発現することが明らかとなった。この触媒を用いてHI光分解反応を行ったところ、水素とヨウ素の生成が確認されたことから、α-Co(OH)2/TiO2-NS触媒がHI光分解反応に活性を示すことを見出した。 本研究の実施により、半導体光触媒を用いたHI光分解では、水の光分解反応の場合と比較して、反応中に助触媒の溶出と光還元による再析出等が起こりやすくなることが明らかとなった。光触媒の高活性化には、HI光分解時の助触媒や半導体の挙動を十分に考慮したうえで、適した材料を選択する必要があることが分かった。
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