研究課題/領域番号 |
18K05293
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
嵯峨根 史洋 静岡大学, 工学部, 講師 (70443538)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マグネシウム金属 / 吸着 / "その場"測定 / 交流インピーダンス |
研究実績の概要 |
当該年度は、前年度に引き続き、金属Mgの電気化学的析出溶解挙動の“その場”観察を中心に取り組んだ。グライム電解液において、貴電位への走査途中でMg溶解が不活性化する原因を探るべく、EQCM測定および交流インピーダンス測定を行った。EQCM測定において、溶解が不活性化した電位で定電位保持を行った際のMgの質量が時間とともに増加する挙動が認められた。これはMg表面に被膜形成あるいは何らかの吸着が起こったものと考えられる。また、卑電位への逆掃引時において再びMgの溶解が活性化する挙動が得られた。以上の結果より、Mg(BH4)2を含んだ電解液においては、特定の電位で吸着が起こり、これによってMgの活性点が塞がれることによって溶解の不活性化が起こったものと考えられる。また、交流インピーダンス測定において、不活性化が起こる電位領域では新たな円弧成分が認められた。これは吸着による不活性化を支持するものである。吸着種の特定には至っていないが、Mg溶解挙動の不活性化はMg(BH4)2を含んだ電解液のみで確認されていることより、BH4-あるいはこれを含んだクラスターイオンが吸着に関与しているものと考えられる。 一方、不活性化が確認される電位領域において定電位保持を行ったところ、ある時点から急激な酸化電流の増加が確認された。これは再びMg溶解が活性な状態に戻ったことを示しており、吸着種がMg表面から脱着したことが示唆される。定電位印加前に様々な時間で開回路電位状態を保持したところ、いずれの条件においても、電位印加からの活性化までの時間が同一であった。したがって、電位印加状態では吸着種によるMg溶解の不活性化が起こるが、完全にMg溶解が不活性化されるわけではなく、Mg表面被膜の破壊も同時に起こっており、被膜が完全に除去されることによってMg溶解が再活性化されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度はコロナ禍により研究室の閉鎖を余儀なくされたため、当初の研究計画通りの内容が一部実施できなかった。 ただしあくまで時間的な問題によるものであり、当該年度はBH4-アニオンの添加によるMg溶解挙動の不活性化の原因を特定するに至っており、研究内容自体は計画通り実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
Mg金属は粒子状析出となることが一般的であるが、当研究史観においては針状析出を確認している。この要因を探るべく、光学顕微鏡による”その場”観察を実施する。得られた針状析出物は従来の粒子状析出物よりも溶解過電圧が小さく、可逆性にも優れるという特異挙動が確認されている。この要因を探るべく、析出物の組成分析、析出物のEQCM測定を行うことで表面被膜の形成の有無を詳細に調べ、Mgの電気化学挙動に新たな知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究室の閉鎖期間が生じたため、本来最終年度であったが、計画に遅れが生じた。従って1年間の延長を申請し、受理された。 残額については、延長期間に実施するための消耗品の購入、論文投稿料などに使用する。
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