研究課題
当該年度は電解液中のMg2+の配位状態に着目し、下記の研究を行った。(1)Mg2+を種々のサイズを有するクラウンエーテルに配位させた電解液でMg析出溶解を調べた結果、サイズの小さいクラウンエーテルに配位させたMg2+は析出が困難である一方、18-クラウン-6に配位させたMg2+は可逆な析出溶解を達成した。これにより、Mg析出の可否はクラウンエーテルとの配位力が支配的であることが示唆された。そこで第一原理計算を用いてMg2+との溶媒和力を見積もったところ、サイズの小さなクラウンエーテルほど個々の酸素とMg2+の相互作用は強くなることが分かった。これにより、電解液中のMg2+と溶媒との相互作用、すなわち脱溶媒和過程も大きな寄与を持つことが明らかとなった。(2)クラウンエーテルは耐酸化性に乏しく、3.5 V (Mg2+/Mg)程度で分解する。そこでMg塩とクラウンエーテルの等モル混合溶液を調製し、全てのクラウンエーテルをMg2+に配位させることで耐酸化性を向上させ、高作動電圧電池用電解液としての可能性を検討した。結果、等モル混合溶液をハイドロフルオロエーテルで希釈した電解液において、Mg析出反応が可能であること、N(CF3SO2)2-の黒鉛電極への挿入脱離が3.5 V以上で可能であることを見出し、Mg2+と溶媒との配位状態が電気化学挙動に大きな影響と及ぼすことを明確にした。(3)Mgの析出溶解挙動は被膜に大きな影響を受ける。そこで水晶振動子マイクロバランス法(QCM)を用いて析出溶解挙動における質量変化の同時測定を試みたところ、Mg析出中にもかかわらず見かけの質量減少が確認された。析出物の断面観察により、析出物が粗大でありながら基板との接触面積が小さいことが確認され、この特殊な形状が振動子に復元力をもたらし、結果として見かけ上の質量減少につながることを明らかとした。
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Electrochemistry
巻: - ページ: -
10.5796/electrochemistry.22-00034
巻: 89 ページ: 12~18
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Journal of The Electrochemical Society
巻: 168 ページ: 120528~120528
10.1149/1945-7111/ac418b