研究課題/領域番号 |
18K05294
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
羽田 政明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70344140)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタン酸化カップリング / 酸塩基複合化触媒 / NO直接分解 / 希土類酸化物 / 触媒機能解析 |
研究実績の概要 |
メタンから基幹化学物質であるエタン/エチレンを直接合成するための酸化カップリングに有効な触媒の創製を目指し、研究代表者が見出したNO直接分解反応との活性点構造の類似性に着目した触媒開発研究を実施した。まずは触媒設計のための基本的指針を得るため、種々の希土類酸化物とバリウムを複合化させた触媒をクエン酸法により合成し、メタン酸化カップリング活性を評価した。希土類酸化物とバリウムを複合化した触媒はNO直接分解活性を示すが、担体である希土類酸化物の塩基性により活性が異なることを見出している。メタン酸化カップリング反応におけるエタン/エチレン収率も希土類酸化物により大きく異なり、特に酸化ディスプロシウムを用いることで750℃で16%程度の収率を達成できた。一方、酸化セリウムを用いた場合は750℃での収率が5%程度であり、最も活性が低くなった。エタン/エチレン収率とNO直接分解活性には比較的良好な相関性があることを改めて明らかにすることができた。 希土類酸化物をナノ分散することによる塩基点の増大を目指し、種々の酸化物(ZrO2、SiO2、Fe2O3、Mn2O3など)との複合化を検討した。固体酸性を示すSiO2やFe2O3を用いた場合、メタン転化率、エタン/エチレン収率とも大きく低下した。主に検討した酸化イットリウムではSiO2やFe2O3と複合化することで塩基特性が低下したことによるものと推察した。一方、ZrO2と複合化した場合、650~800℃の温度域でエタン/エチレン収率の向上が見られた。引き続き検討が必要であるが、酸性・塩基性の二元機能を有するZrO2と相互作用することで酸素活性化に有効な塩基点が増大したものと推察しており、引き続き、非常に弱い塩基性を示す酸化物と希土類酸化物を複合化することによるメタン酸化カップリング活性の向上効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は「酸塩基複合化触媒の調製とメタン酸化カップリング活性」について検討を実施し、触媒の塩基特性の影響を解明するための研究実施計画を立てた。塩基特性が異なる種々の希土類酸化物について詳細な検討を実施し、比較的マイルドな塩基点が多い酸化物を合成することの重要性を見出すことができた。in situラマン分光法については評価条件の最適化に時間を要したため、一部計画から遅れているところもあるが、触媒の高活性化についてはすでに検討を開始しており、次年度につながる知見も出てきていることから、おおむね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の検討により、酸塩基の二元機能を有する酸化物との複合化の有効性を見出すことができた。この知見をさらに進展させ、弱い塩基性を示す酸化物との複合化による活性向上効果を検討するとともに、改めてNO直接分解活性との関連性を詳細に検討し、新たな視点からの触媒設計の指針導出を目指す。さらに、平成30年度の導入したin situラマン分光セルを活用した活性点構造に関する検討を本格的に開始するとともに、同位体酸素を用いての酸素種の挙動に着目した反応機構解明につながる知見創出を目指した検討を実施する。得られた成果を整理し、高活性なメタン酸化カップリング触媒を創成するための触媒設計指針を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度においては主要な物品として「ラマン分光用in situセル」の購入を予定し、計画通りに購入した。詳細に実験するために、想定した仕様を若干変更(プログラム昇温が可能な温度調節器)したため、予定価格を若干上回る価格で購入した。消耗品として同位体酸素の購入も計画していたが、上記の理由のため平成30年度には購入することができなくなり、次年度利用(約8万円)が生じることとなった。次年度利用の経費に加えて、次年度に配分される研究費と合わせて同位体酸素(約18万円)を購入する計画である。
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