研究課題/領域番号 |
18K05296
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
東 正信 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授 (10711799)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 硫化物 / 光電極 / 可視光水分解 / シアノフェレート |
研究実績の概要 |
硫化物光アノードを用いた水分解系を構築するために、ケミカルバス法を用いた硫化カドミウム(CdS)電極の調製法が電気化学特性に与える影響について検討した。 ケミカルバス法で調製したCdSには、不純物としてCd(CN2)、CdOが存在していることがXRD測定により明らかになった。窒素中でCdS電極の焼成処理を行い、各電極をフェロシアン化物イオン[Fe(CN)6]4-を含むホウ酸緩衝液中(pH 8)で光電気化学特性を評価したところ、焼成温度の上昇にともない光電流値も上昇していった。これは、焼成温度が上昇することで、CdSの結晶性が向上し、CdS内での電子と正孔の再結合が抑制されたことと、CdS-電極基板界面の密着性が向上し、その界面での電子移動が効率良く進行したことが考えられる。不純物の影響も考えられたが、Cd(CN2)は焼成温度により結晶性はほとんど変わっておらず、電流値に影響は与えていないと結論した。CdOに関しては、溶存酸素が存在する同溶液で検討したところ、CdOの明確な結晶化が見られた500 ℃焼成のCdS電極のみ、光電流値の著しい減少が見られたことから、結晶化したCdOはCdSの励起電子を捕捉し酸素還元に消費する負の要因として機能することが明らかになった。 光電流の安定性評価したところ、焼成温度によって明確な差が見られた。未焼成および200、300 ℃の焼成の電極では、時間の経過とともに光電流は減少していったが、CdSの結晶化が進行した400、500 ℃焼成の電極では徐々に光電流は増加していった。これは、CdSが結晶化することで表面積が小さくため光溶解するCdSの量が少なくなり、その結果、薄層でシアノフェレート種K2Cd[Fe(CN)6]がCdS表面に修飾され、CdSのさらなる光溶解が抑制されるとともに、[Fe(CN)6]4-の酸化が促進されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4月に異動したため、装置の立ち上げ等に時間を要した。また以前ほどの研究環境が整っていないのも要因である。ただ新たに行った硫化物光電極系の開発はこれから進展していける見込みがあったので、精力的に行う。
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今後の研究の推進方策 |
硫化物光電極の調製法の検討により、フェロシアン化イオン存在化で安定した光電流が得られることがわかった。しかし、調製したCdS電極には活性に負の要因を与える不純物が含まれており、新たな電極調製法、たとえばあらかじめ調製したCdS粒子を電極化する方法や、硫化水素気流下での焼成処理を取り入れることで、不純物を取り除いたCdS電極の作製し高効率化を図る。また、CdSは硫化亜鉛ZnSやセレン化カドミウムCdSeと固溶体を形成できるため、バンド制御が可能である。適切なバンド制御を行うことで高効率化を図る。 また適切な酸素生成系との組み合わせを行い、水分解系の構築を行う。酸素生成系には以前開発した酸化コバルトを担持した酸窒化物光電極や、酸化タングステン光触媒を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の機械およびガラス工作の利用により、装置や器具の出費が抑えられた。翌年度は効率良く実験が進められるように予算を使用する。
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