研究課題/領域番号 |
18K05306
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤原 明比古 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70272458)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二次電池 / リチウムイオン電池 / 有機硫黄ポリマー / 正極活物質 / 光酸化 / 充電 / 光充電 |
研究実績の概要 |
外部充電不要な小型電子機器が実現すれば、情報通信技術(ICT)やIoT機器の利便性、メンテナンス性が飛躍的に向上する。現在、太陽電池と二次電池とを組み合わせた電子機器は存在するが、機器が大型化し、携帯型電子機器への応用は困難である。 本研究の目的は、外部電源がなくても使用可能な小型電子機器の実現に向け、光による充電機能を有する二次電池正極材料を開発し、光充電できる電池を作製することである。具体的には、ジチオビウレット(DTB)をベースとした有機硫黄材料のジスルフィド結合(S-S結合)の電気化学的充放電(酸化還元)、光充電(酸化)について多様な分析手法を駆使し、(1)高効率光酸化条件の決定、(2)電池セル内光化学反応の機構解明、(3)外部充電不要な光充電の作製、のステップで研究を進める。 令和元年度は、「(2)電池セル内光化学反応の機構解明」を主目的として研究を推進した。第一に、基本的電気化学特性を理解するために、2極セルを作製した。その後、光照射を可能とする電気化学実験のために窓付き電池セルを作製した。それぞれのセルに対して、正極にはDTBポリマー、負極にはリチウム金属をもちいた。リファレンスとしてLiCoO2を正極材料に用いたセルも作製した。その結果、DTBポリマーを正極に用いた窓付き電池では、LiCoO2では観測されなかった光照射によるインピーダンスの低下がみられた。明確な光充電効果は観測されなかったが、平成30年度の成果をもとに、電池内での高効率酸化条件を見出し、光充電を可能とするステップ(3)を推進する状況が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「(2)電池セル内光化学反応の機構解明」を推進するために、正極材料となるDTBポリマー材料を用いた2極セルを作製し、LiCoO2を正極材料にもちいたものと比較した。その電気化学的特性の違いを理解したうえで、それぞれの正極に対して光照射可能な窓付きセルを作製し、電気化学的特性およびその光照射効果を調べた。窓付きセルは、光照射可能である一方、正極と負極との距離が長く、反応速度が遅くなるなどのデメリットもあり、窓付きセル特有の効果は2極セルとの比較によって検証した。そのうえで、窓付きセルでの電気化学特性の光照射効果から、DTBポリマーにおいてのみ、光照射によるインピーダンス減少がみられ、光応答が観測された。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、DTBポリマーを正極材料にもちいた窓付き電池において、平成30年度の成果をもとに、電池内での高効率酸化条件を見出し、光充電を可能とする電池を作製する。このためには、電解液の組成費や窓材料の最適化を行う。具体的には、DTBポリマー内に隣接する硫黄の光酸化によるジスルフィド結合形成に適したイオン濃度の電解液の組成決定や光酸化に適した波長に対して透過性の高い窓材料の選択を行う。
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