電極表面での微分キャパシタンスの理論は,特異吸着のない場合はGouy-Chapman-Stern(GCS)理論でほぼ定性的に説明されるが,いわゆるゼロ電荷点で最小値をとったあと増加に転じ一定の値になることがGCS理論では示されている。しかし,単結晶表面と特異吸着がないと考えられている電解質を使った実験では,微分キャパシタンスは一定ではなく,pzcから電位差の絶対値が増えるにつれて減少することがフランスのグループによって報告されている。この減少を説明する理論はこれまでになく,本研究の目的とした。 第一原理計算(quantum-espressoコード)を金属電極(本研究では簡単のためアルミニウム)に,電極表面上の電解質溶液(NaCl 溶液)に統計力学のRISM理論(Reference Interaction Site Model)を用いて,電極表面上の微分キャパシタンスを理論的にもとめた。理論は大谷,西原が作成した計算コードを用いた。電極表面に電荷を置き,その電荷を遮蔽するように対イオンと共イオンの分布が変化するので電極と沖合の溶液の間に電位差が発生する。表面電荷密度を電位で微分して微分キャパシタンスを,電解質溶液の濃度を変えて計算した。計算の一部では,微分キャパシタンスが実験結果と同じように電位のpzcからのずれに伴い増加して減少する傾向が得られた。ただし,グローバルな傾向および定量的には完全な一致は得られなかった。 今後は,銀の単結晶面,フッ化ナトリウムや過塩素酸ナトリウム等の電解質溶液で同様な計算を行い実験結果と比較する予定である。
|